クール・ジャパンは異世界をも制覇する!? 意外にハードでリアルなオタク文化啓蒙アニメ『アウトブレイク・カンパニー』

日刊サイゾー / 2013年11月17日 16時0分

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 先日、NHKの情報番組にて、ロシアにおける日本のアニメ、コスプレの隆盛ぶりを伝えるレポートを目にした。異国の若者たちがオタク文化を通じて日本に対して強い親近感と憧れを抱いていることを、ひしひしと感じられる非常に興味深い映像だったのだが、いまやロシアのみならずフランス、アメリカ、アジア各国など世界各地で日本のオタク文化が広く受け入れられていることは、さまざまなメディアで報道されている通り。

 そんな国境、人種、言語の壁を超えて世界中を熱狂させるオタク文化は、果たして時空の壁すら飛び越えて異世界の人々も魅了できるのだろうか? そんな思考実験を作品化したアニメが、現在放送中の『アウトブレイク・カンパニー』(TBSほか)だ。

 とある事情から自宅警備委員を1年間続けた主人公・加納慎一は、ついに我慢の限界に達してしまった両親から、復学・就職・離縁の三択を迫られ、仕方なく就職活動を開始。そこで「総合エンターテイメント商社アミュテック社」の総支配人に就職。ほぼ拉致に近い形で、偶然日本と地続きになってしまったファンタジー世界の一国・神聖エルダント帝国に連れて行かれてしまう。

 「アミュテック社」は、実は日本政府と神聖エルダント帝国が共同出資した、異世界初の企業であり、文化交流推進が目的の半民半官企業だったのだ! そこで慎一は、自らのオタク知識をフル活用し、オタク文化の輸出と啓蒙活動を開始。神聖エルダント帝国に、帝国初の教育機関であるオタク養成学校を設立し、日本語とオタク文化教育を開始する。その結果、白銀の鎧を身にまとう戦士や、エルフ、ドワーフ、獣人などファンタジー世界の住人たちが、「幼女萌え!」やら「エロゲに重要なのは映像か、シナリオか」という論争やら、美少女ゲームの歴史についての話題で盛り上がるようになってしまうからさあ大変。……というのが、本作のあらすじ。

 こう書くと、単なる荒唐無稽なコメディ作品のようにも見えるが、その一方で「身分に関係なく学習できる場である学校という施設は、国体を揺るがしかねない危険な存在」という極めてリアルな言説が作中で飛び出したり、オタク文化を広めることで帝国の文化を破壊しかねない、という理由で慎一たちの命を狙う保守派テロリストが出現したりと、時折ドキッとするようなシーンも出現するのが本作だ。

 文化というものは、その国、地域が長い歴史を重ねて培ってきた、身近な存在である。そこに何者かの手によっていきなり異国の文化が流入し、旧来の文化を押し流す勢いで席巻したとしたら、そこに軋轢が生まれるのは必然である。本作で描かれている異文化交流、流入による問題は、近年の我が国における韓流ブームと通じるものがある。そして、現在も世界中に広まりつつある日本のオタク文化もまた、同様に世界のどこかで同様の軋轢を生んでいるかもしれない。そういう想像力を持って本作を見れば、異文化交流の難しさと課題。そして、意義というものが見えてくる。

 おバカアニメに見えて、意外に地に足の着いた問題を提起するドラマ。それが『アウトブレイク・カンパニー』の魅力である。

 ちなみにもう一点、本作の魅力を挙げるならば、「ここまでやっていいの?」的なアニメ、漫画、ゲームのパロディネタである。いちいちツッコむのすら面倒くさくなるほど飛び出すオタクネタの数々は必見である。そのくせ『ニャル子さん』などのようにこれ見よがしにオタクネタをアピールするのではなく、サラッと自然に物語に織り交ぜてくるところが本作の美学。そこに痺れるし、憧れるのは筆者だけではないはずだ。
(文=龍崎珠樹)

日刊サイゾー

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