「大モテない先生」の結婚という危機をも容赦なき笑いに変える『JUNKサタデー エレ片のコント太郎』

日刊サイゾー / 2013年11月27日 16時0分

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しゃべりと笑いと音楽があふれる“少数派”メディアの魅力を再発掘! ラジオ好きライターが贈る、必聴ラジオコラム。

 ひとりの芸人の結婚により、非モテの共同戦線に衝撃が走った。11月16日深夜に放送された『JUNKサタデー エレ片のコント太郎』(TBSラジオ 毎週土曜深夜1:00~3:00)の番組終了間際、パーソナリティーのひとりであるエレキコミックのやついいちろうとタレント・松嶋初音の結婚が、思いがけずサラッと発表されたのである。果たしてこれは非モテの希望なのか、裏切りなのか?

客観的に見れば、これはもちろんいち芸人の結婚に過ぎない。しかしやついは、番組内で「大モテない先生」と崇め奉られ、先陣を切って非モテの本音を吐露することで多くのリスナーを惹きつけてきた。もちろん、すべては聴き手とのあうんの呼吸を前提とするユーモアであり、全体が丸ごと一種のコントとさえいえるかもしれないが、その根底に「モテない」「モテたい」という共感が横たわっていたのは間違いない。番組HPにも、《JUNKの中でも抜きん出てモテない3人がお送りする、モテの下流社会ラジオ》という文字が躍っているように。

 そもそも、深夜ラジオはいつから非モテのものになったのか。たとえば昔の人気番組であったビートたけしやとんねるずの『オールナイトニッポン』には、少なくともパーソナリティー側に非モテ感はほとんどなく、むしろスター然としたモテ感のほうが強かった。リスナーの投稿ネタは今と変わらず非モテ感満載だったが、構図としては、モテの先輩としてのパーソナリティーが、非モテの童貞リスナーたちの言動を、自らの青春時代に照らし合わせて笑い懐かしみながら引っ張ってゆくという形だった。

 そう考えていくと、やはりターニングポイントとなったのは、伊集院光のブレークだろう。彼以降、パーソナリティー自身の「現役非モテ感」が、リスナーの共感と信頼を勝ち得るという図式が一般化する(もちろん語り手の話の面白さが大前提だが)。とはいえそんな伊集院も、やついと同じくタレントと結婚しているのだが。ちなみに、いま最も「現役非モテ感」のあるパーソナリティーといえば、ナインティナインの岡村隆史だろうか。

 つまり冒頭で「非モテの共同戦線」といったのは、そういった「パーソナリティーとリスナーが同じ非モテの地平でつながっている状態」を指すのだが、では『エレ片』はその戦線崩壊という危機に、どのようなスタンスで立ち向かったのか? 先々週の投げっぱなしの結婚発表を受けた先週の放送はまさに、リスナーのそのような問題意識を受けて立つような興味深い内容だった。

 この日の放送はまず、「エレ片の結婚ト太郎」という、緩めにもじったタイトルコールから始まった。実は結婚発表後のポッドキャストで、「エレ片」の「片」ことラーメンズの片桐仁は、自分だけやついの結婚を知らされていなかったことにマジギレし、「やついは昔から隠すから」「腑に落ちない」「疎外感がすごい」などと完全にすねていたのだが、ここでは別人のように朗らかに番組タイトルを叫ぶという意外な幕開け。となれば、このままぬるいお祝いムードで番組が進むのかと思いきや、やついの相方である今立進が徐々にリスナーの鬱屈した気持ちを代弁し始める。「『モテない』ってとこで生きててほしかった」「『モテない』の走りが速すぎて背中が見えないやついさんでいてください!」「モテない(ウサイン)ボルトでいてください!」と、非モテのトップランナーを惜しむ言葉を連発。浮ついた祝福ムードは、すっかり雲散霧消する。

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