NHKの「女性の貧困特集」ドキュメンタリー番組に疑問符……結局は国営巨大メディアの“高みの見物”か

日刊サイゾー / 2014年2月1日 12時0分

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 去る1月27日にNHK総合テレビで放映されたドキュメンタリー番組『クローズアップ現代 あしたが見えない ~深刻化する“若年女性”の貧困~』が話題となっている。

 同番組は、20代を中心とした若年女性の雇用状況が大変に厳しいものとなっており、低い収入での生活を余儀なくされている実態を報じた。高校を卒業した若い女性の正規雇用率が5割に満たないという状況で、多くの女性がアルバイトなどの報酬が比較的低い仕事に就かざるを得ない実情を説明。複数のアルバイトを掛け持ちして働いても、月収にして10万円程度にしかならない事例などを紹介した。

 さらに深刻な例として、相応の生活費が必要とされるシングルマザーの状況を取り上げ、実に8割のシングルマザーが貧困状態にあること、少しでも高い収入を期待して風俗産業に就業するシングルマザーが少なくないことなども報告された。

 こうした報道内容を評価する声がある一方、番組内での説明不足、あるいは不備について指摘する意見も噴出した。

 問題とされたのは、風俗店で働くシングルマザーの発言と、その内容に対する番組側の対応である。あるシングルマザーの女性は風俗店で働くようになったきっかけとして「生活保護を申請しようと役所の窓口を訪れた際、担当職員から『生活保護の申請に必要な調査に2~3カ月かかる』との旨を言われたため、申請を断念した」と発言した。

 ところが、この点について取材を担当した記者や番組の進行役など、出演者からは何ひとつ指摘も説明もなく、テロップ等での解説も一切なかった。

 しかし、生活保護法では行政は生活保護の申請がなされた場合、14日以内に決定を行い、調査等の必要がある場合でも30日までの延長しか認めていない。つまり「生活保護に関する調査に2~3カ月かかる」という発言があったとしたら、それは明らかに誤りであり、全国で横行している、いわゆる「水際作戦」である可能性が高い。

 水際作戦は生活保護法に反する違法行為であって、番組はこの点についてしかるべき指摘をすべきであった。にもかかわらず、一切の説明やコメントが認められなかったのである。

 番組終了後、専門家などから疑問や批判が続出。NPO法人自立生活サポートセンター・もやいの稲葉剛氏も自身のTwitterで、「なぜ生活保護制度に詳しい専門家の監修を受けないのか」「当事者の声をテレビでそのまま流すと、意図せずとも虚偽の説明を流布させる、という結果を招くことになります」と指摘した。

 さらに28日には、衆議院議員の山井和則氏がこの問題を取り上げ、3項目にわたって厚生労働省に質問。これに対して厚生労働省が「不適切であると考えています」などと回答した。

 大手メディアが報道において、最も重要な点を無視したり、または著しく誤解を生むような表現を用いたりするケースは過去にも散見する。

 社会的に問題性の高い状況を報道することは価値があろう。しかし、大手メディアの報道を見るたびに、しばしば弱者への配慮についてどこかが欠けていると感じてしまうことがある。より慎重に、そして想像力を働かせる努力が欠落してしまっては、価値ある報道も恵まれた大手報道機関による高みの見物に堕してしまう危険性は否定できないのではなかろうか。
(文=橋本玉泉)

日刊サイゾー

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