セウォル号船長らに極刑求刑も……韓国で17年間“死刑執行ゼロ”の、なぜ?

日刊サイゾー / 2014年10月30日 15時0分

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 今年4月に起きた旅客船セウォル号の沈没事故で、イ・ジュンソク船長をはじめとする運航担当乗組員15人に対する公判が行われた。10月27日に光州地裁で行われた公判で、検察側は船長に死刑を求刑。ほかの14人にも、無期懲役などが求刑されている。

 検察は、イ船長について「総責任者として沈没原因を作り、待機放送のほかになんの措置もとらずに船舶から退避するなど、最も重く、直接的な原因がある」とし、“不作為の殺人罪”が成立するとして極刑を求めた。実際にイ船長は事故当時、残された乗客300人を置いて現場から真っ先に脱出。下着姿で逃げ出す情けない彼の姿は、日本でも大々的に報じられたので、記憶に新しい人も多いだろう。

 だが、たとえ検察の主張通りに死刑判決が下されたとしても、イ船長の死刑が執行されるかどうかは別問題といえる。というのも、韓国ではここ17年間、一度も死刑が執行されていないからだ。

 もちろん、この17年間、韓国に凶悪犯がいなかったわけではない。例えば、03~04年にかけて21人を殺害したユ・ヨンチョルなどは、まさに凶悪犯そのもので、実際に05年に死刑が確定した。しかし、現在も死刑は執行されておらず、生存している。また、小学生女子2人を拉致後に殺害し、09年に死刑が確定したチョン・ソンヒョンも、同じく処刑されていない。法務部は10年3~4月、この2人を含む死刑囚の死刑執行を検討したが、結局見送ったとされている。韓国メディアによると、当時EUと推進中だった自由貿易協定(FTA)の障害になるとして、大統領府の指示で死刑執行を白紙化したという。政治的な理由から死刑執行が留保されたというわけだ。ちなみに、直近で死刑が執行されたのは、97年12月30日の23人。その中には、乗用車で2人を殺害して17人を負傷させるという無差別殺傷事件を起こしたキム・ヨンジェなどが含まれている。

 セウォル号のイ船長の犯した罪は確かに重大だが、事実上、執行されない死刑という宣告を、裁判所は下すのだろうか? 韓国の法曹界は、今回の死刑求刑に対して慎重な立場を示している。それは、イ船長には積極的な故意や残忍な殺害方法があったわけではないため、過去に死刑判決が下った犯罪とは大きく事情が異なるからだ。また“不作為の殺人罪”が実際に適用された事例も、これまでに2件しかないという。過去の判例から冷静に分析すると、確かに死刑にするのは若干強引なのかもしれない。

 いずれにせよ、セウォル号遺族らはイ船長だけでなく航海士などにも死刑を求めており、裁判所の判決次第では、まだまだ波乱がありそうだ。イ船長らの判決は、11月11日に言い渡される。

日刊サイゾー

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