健常者お断り――Eテレ障害者ドラマ『悪夢』が描く、“普通”の生活

日刊サイゾー / 2014年12月9日 15時0分

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 そのラウンジ・バーでは、みんなが音楽に合わせて楽しそうに踊っている。ある者は義足で、ある者は脳性まひで動きにくい体躯を揺らし、ある者は通常の半分しかない腕を振り回し、ある者は全身のうち唯一動く口元と目線だけを動かしリズムを取っている。バーテンダーもダウン症。あえて言葉を選ばずに言えば、悪夢のような光景だ。

 そこは、入り口に「健常者お断り」と書かれた障害者たちが集うバー「悪夢」。ドラマ『悪夢』(Eテレ)の舞台である。

 『悪夢』は、毎週放送されている障害者バラエティ『バリバラ』から生まれたドラマだ。『バリバラ』とは「バリアフリー・バラエティー」の略称。これまで、テレビの中の「障害者」は「かわいそう」な存在でなければならなかった。「守るべき」存在であり、「感動する」対象だった。もし彼らを笑いのネタにしようものなら、すぐさま「不謹慎」の烙印を貼られる。しかし、『バリバラ』ではそんな見方を変えようと、障害者カップルのラブラブっぷりを競う「バリバカップルGP」や、日本一面白い障害者を決める「SHOW-1グランプリ」(たとえば、脳性まひの二人がコンビを組む脳性マヒブラザーズが披露する「医者コント」では、「手が動かない。体も震える。うまくしゃべれない」という症状で「風邪じゃないか」と診察を受けに来た患者に医者が「あなた風邪じゃなくて脳性まひですね」とツッコむ)など、「障害者×恋愛」「障害者×お笑い」といったテレビでは半ばタブー視された企画を次々と実現させてきた。

 そんな『バリバラ』が、「障害者週間」に合わせて作った特集ドラマが本作『悪夢』なのだ(※再放送は9日24:00から)。

 統合失調症の主人公・真を演じるのは、自身も統合失調症であるお笑いコンビ・松本ハウスのハウス加賀谷である。アルバイト先の店主をカンニング竹山、真の母を杉田かおるが演じたりしているが、登場人物の大半である障害者たちは、本当の障害者たちが演じている。真は加賀谷がそうであったように、幻覚や幻聴に悩まされている。やっと就いたアルバイト中も「お前は普通じゃない」「働けない」などという幻聴が聞こえ続け、全身白塗りの男たち=シロイヒトに常に追われているのだ。

 なお、このシロイヒトを演じているのは麿赤兒率いる舞踏集団・大駱駝艦のメンバーたち。画面から伝わってくるその異様さと恐怖は、圧巻だ。

 そんな状態だから、当然新聞配達のアルバイトも満足にできず、店主たちから「普通じゃない」「関わりたくない」と気持ち悪がられてクビが宣告されてしまう。新たなバイトを探して何度も面接を受けるが、ことごとく失敗。その帰り道でもやはり幻覚と幻聴に襲われ、シロイヒトに追われ、逃げこむように入ったのが、バー「悪夢」だった。

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