90年代サバサバ脳を、コント仕立てでお届け! NHK有働由美子『ウドウロク』の正しい読み方

日刊サイゾー / 2014年12月30日 12時30分

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 先日、昼間の再放送で『29歳のクリスマス』(フジテレビ系)を観た。山口智子、松下由樹、柳葉敏郎が恋に仕事に悩みながら、20代最後のクリスマスを迎える。最終回の視聴率は26%を超えた、90年代を代表する大人気ドラマだ。

 不器用で一生懸命、肝心なときにかわいくなれない元祖サバサバ女。山口智子は、現代に続く女の自意識問題というパンドラの箱を開けてしまったA級戦犯だな……と、『29歳のクリスマス』を観ながらぼんやり考えた。山口智子はその後、表舞台から姿を消し、「いつまでも変わらない美貌の女優」としてイメージの世界に生きている。しかし当時の山口智子に共感し、サバサバ道を選んだ女たちは、30代、40代になっても「いい女=男前」という呪縛から逃れられず、コントのような物言いをしながら21世紀をさまよう。山口より5歳下であるNHKアナウンサー有働由美子初のエッセイ『ウドウロク』には、そんな山口的サバサバ道を選んでしまった女の悲哀が、そこかしこにあふれている。

 有働アナといえば、何はさておき『あさイチ』である。朝の絶対正義『はなまるマーケット』(TBS系)を終了に追い込んだ、モンスター番組のMC。時に、NHKらしくないと言われるぶっ飛んだ企画、発言、それらは有働アナのキャラクターに負うところが大きい。その象徴たるが、くだんの「わき汗」事件。有働アナのわき汗を指摘するFAXを、番組内で本人が読み上げたというアレ。本書でも冒頭で、この「わき汗」について触れている。そして「“わき汗の”アナウンサーという、ちょっとイタい、かわいそうな形容に耐えている感じが好感を持ってとらえられるらしく、放送でちょっとくらいクロいことを述べても、苦情がこなくなった」と、わき汗というマイナスが好感にチェンジされたことに驚いている。えー、知ってるくせに! NHKのアナウンサーがわき汗について触れたらオイシイってこと、知ってるくせに! 

 そんな有働流イメージ戦略は、「下ネタ対応」にも表れる。長く男社会に生きてきたから、ぶりっ子的反応ができなくなったと嘆く有働アナ。男性から「このモデルさん、清楚でいいよね」と言われ、「でもさ、実は意外に奔放だったりするのよ~。たぶん。いや、きっと。そういうギャップに男は弱いよね~。昼間は純白、夜は娼婦。歌にもなっているもんね。ま、分かるけどね~。やっぱ娼婦って、ひとつの憧れでもあるよね」と返したという有働アナ。その時、かの男性から言われた一言が「有働さん、発言が、男社会で長く生きすぎ」。そして由美子はショックを受ける。「処世術として、身を守るために健気な努力をした結果、なんですよ」と。下ネタOKの気取りなさで男性ファンを喜ばせ、かわいらしい反応ができないことを「男社会に生きてきたから」と転換して、女性ファンを共感させる。もうこうなると「“昼間じゃ純白、夜は娼婦”ってアンタ……」とツッコむことも虚しい。恐るべし、サバサバ脳。

 また、本書で繰り返し述べられるのは、自身の容姿への、アナウンス能力への自己批判、そして40代独身であることの虚しさだ。数々のNHK看板番組のキャスターをこなし、NY特派員を経験し、紅白歌合戦の総合司会に抜擢され、NHK最大の賭けだった『あさイチ』も成功させ……。有働アナが築き上げた輝かしい実績を考えれば、なんら自身を蔑む必要はないはず。しかし『あさイチ』を観ていれば、なんとなく分かる。イケメン俳優が来れば、大げさに浮かれる。スーパー主婦(家事機能抜群のスペシャリスト)が紹介されれば、自分の家事力の低さを嘆く。有働アナは超有能であるがゆえに、「イケメンに浮かれるおばちゃん」や「私生活はだらしない中年女」を自然と演じてしまうのだ。視聴者を、親しみやすさの渦に巻き込む。わき汗も下ネタも容姿/仕事能力への悲観も、スーパーエリートである自分をダウンサイズさせるための演出。そんなことしなくてもいいのに……と思っても、せずにはいられないのだ。すべては、サバサバしたイイ女であるために。

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