実践のための「ニュー・ジャーナリズム」の復権 「スペクテイター」第33号
日刊サイゾー / 2018年4月10日 22時30分

この連載は「100人にしかわからない本」と銘打っている。なので、この本について言及するには、少々申し訳ない気持ちもある。
2015年5月に発行された「スペクテイター」第33号(エディトリアル・デパートメント/幻冬舎)が、それである。
この雑誌は年3回の変則的な刊行形式で、各号ごとに、ひとつのテーマを突き詰めていく。
2月に発売された最新号では、つげ義春をテーマに、多方向から稀代の天才漫画家について探求している。
正直、あまりにもコアな雑誌。その第33号が特集したのは「クリエイティブ文章術」である。タイトルだけみれば、文章の描き方講座か何かを想像するかもしれない。
ところが、この号が多くのページを割いて紹介したのは「ニュー・ジャーナリズム」であった。
「ニュー・ジャーナリズム」という言葉を聞いて「ああ」と、納得できる人がどれだけいるだろうか。それは現代では、ほぼ忘却された言葉になっている。例えばGoogleで検索しても出てくるのは、Wikipediaなどの、ごくごく簡易的な解説くらいである。
1960年代後半にアメリカで生まれた「ニュー・ジャーナリズム」。それは、あえて客観性を放棄して、取材対象に関わり合うという方法論である……と、説明を始めれば字数はいくらあっても足らない。今では、もう忘却された「ニュー・ジャーナリズム」。それを21世紀にあって「スペクテイター」第33号は、真っ向から語り再生を図っている。
とりわけ、「Quick Japan」の初代編集長であった赤田祐一の筆による「ニュージャーナリズム小論」は、もっとも簡潔に「ニュー・ジャーナリズムとは何ぞや」を理解するに適した解説である。
ここで、赤田は「ニュー・ジャーナリズム」を、こう説明する。
***
ニュージャーナリズムについて知りたければ次の本を読めばいいと思う(翻訳書が出ています)
トルーマン・カポーティ『冷血』
ハンター・S・トンプソン『ヘルズエンジェルズ』
トム・ウルフ『ザ・ライト・スタッフ』
ゲイ・タリーズ『名もなき人々の街』『ザ・ブリッジ』
日本人の手によって書かれたノンフィクション本では、以下四本の表題作がいいのではないか。
沢木耕太郎『テロルの決算』『一瞬の夏』
立花隆『中核VS革マル』『日本共産党の研究』
***
論の冒頭で、こう記した赤田は「これでは単純化が過ぎる」「スペースが埋まらない」と、以降数ページを費やして丁寧に「ニュー・ジャーナリズム」の発生からを書き記している。その歴史性は、当然知っておかなければならない。でも、もしも実践のための糧とするならば、この冒頭の読書案内だけで十分である。
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