「美女」と「PC」と「液体窒素」……のだめ作者が描く『87CLOCKERS』の超絶マニアックな世界

日刊サイゾー / 2018年10月23日 14時0分

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 みなさん『のだめカンタービレ』は読んだことがありますでしょうか? ピアノの才能は天才的なのに、部屋がゴミ屋敷と化してしまう汚女子・野田恵と、指揮者を目指すエリート&王子様キャラの千秋真一という、2人の音大生を中心としたラブコメで、クラシック音楽の世界をテーマとしたマンガでは最大のヒット作といえるのではないでしょうか。

 天然ボケのヒロインに王子様、そしてクラシック音楽――ある意味、少女マンガとしてはこれ以上ない極上の世界観を描いた二ノ宮知子先生。その二ノ宮先生が「のだめの次の作品」として世に送り出したのが、あまりにニッチなパソコンのオーバークロック(OC)がテーマの作品『87CLOCKERS』でした。一流少女マンガ家が、男子率99.9%ぐらいの超絶マニアックな世界を描く理由が謎すぎるのですが、読んでみると、これが想像以上に面白かったのです。

 本作は2011~16年にかけて、「ジャンプ改」および「週刊ヤングジャンプ」(ともに集英社)で連載されていました。『のだめ』連載終了後、少年誌に場を移しての連載ということで、男子らしいテーマになったようですが、それにしたって狙いどころがマニアックすぎます。なにしろ、ちょっとパソコンに詳しいくらいでは到底太刀打ちできない敷居の高い世界なのです。

 オーバーロックとは、いわゆる自作のパソコンを快適に動かすために改造を施し、CPUの速度(クロック周波数)上げることをいいます。車だったら、エンジンやら足回りやらをチューニングしてパワーアップをするのって珍しくないですよね。それのパソコン版というわけです。

 しかし『87CLOCKERS』が描くのは、単なるパソコンの改造の話ではなく、競技としてのオーバークロックの世界なので、実用性はそっちのけ。いかにパソコンを速くできるか、そして時には命懸けで「スピードの向こう側」をただひたすら追求する漢たちの物語なのです。ちなみに本作では、主要キャストとして凄腕の女性オーバークロッカーが2人も出てきてストーリーに華を添えてくれますが、現実には女性のオーバークロッカーなんてツチノコより希少な存在だと思います。

 主人公は、見るからに草食男子な雰囲気を持つ音大3年生の一ノ瀬奏(いちのせ・かなで)。パソコンマンガなのに、主人公が理系ではなく、なぜか音大生……この無理やりな「のだめ感」はさすがです。

 就活や海外留学といった周りの音大生の熱気をよそに、今ひとつ音楽に夢中になれない、さえない音大生活を送る奏。ある日、アパートの外で裸足のまま佇んでいる謎の美女(中村ハナ)を見て、胸キュンしてしまいます。そして別の日も、またアパートの外で泣きながら佇んでいるハナ。これはただごとではない、DV男に暴力を振るわれているんじゃないかと部屋の中を覗くと、まるで何かの儀式のように、モウモウとした怪しい白煙の中でゲームをしている男がいました。

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