日本のインドネシア鉄道“失注”は中国の無料モデルが原因

デイリーニュースオンライン / 2015年10月6日 12時0分

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 やまもといちろうです。そろそろ秋の風が冷たく感じる昨今、1kgほど脂肪が増えました。

 ところで、先日来インドネシアで日本対中国の熾烈な争いになっていたインドネシア国営高速鉄道で、インドネシアが中国案を採用するという日本失注の決定を下したことが報道されました。

 我らが官邸の主、菅義偉さんもお怒りです。

 もちろん、インフラ輸出をアベノミクスの目玉としたい日本政府としても、この受注競争での敗北は微妙なところではあります。すでに報じられている通り、2008年から足掛け8年越しで実現可能性調査から計画立案、具体交渉に至るまで入念な準備を続けてきた日本側としては、実に痛い敗戦だという声があるのも事実です。

 また、インドネシアの親日度に過度に期待した記事論調もありました。一方、南シナ海での領土問題に揺れる中国とインドネシアの間では経済面での結びつきも強まる中で対中観が多様化している点もあります。

 紐解くと、その前の8月にインドネシアで閣僚の大幅交代があり、減速するインドネシア経済のテコ入れのために、中国からの援助を期待するための人事と思われる内容が強く示唆される記事が産経新聞に出ております。つまり、ある程度高速鉄道の建設で日本側に不利な条件は整い始めていた、あるいは、大規模な経済援助を中国から引き出す外交交渉が行われた経緯はあったのではないかと思われるわけです。

 この中国の建設計画は、もともと日本が策定して提出した計画に沿った内容を下敷きに、中国がおもに施工や費用面で譲歩したものが提示されていたと見られ、これが理由で日本案が落ちたのだとすると「そもそも日本が提出した計画を何でまんま中国が〝活用〟して再見積もりしているんだ」という気にもなります。

日本側は反省する必要なし!?

 しかしながら、現地報道をつぶさに見ると、ほとんど無償で中国がインドネシアで高速鉄道を建設するという、大規模経済援助そのものに内容が振り替わっているのは気になります。

 もしも、一連の報道の通り鉄道建設のためのインフラ投資負担を減らすため、中国がインドネシアにほぼ建設費用の全額を負担することを申し出ていたのだとすれば、日本はそのような値下げ競争に身を捧げる必要も無いと思われます。diplomatによると、中国は55億ドル、日本は62億ドルの入札金額だったと報じられていますが、同時に日本の提案は日本とインドネシア政府による低金利ローンなのに対し、中国はかかる予算の主要部分が中国政府のローン、すなわちインドネシア政府の腹は建設着工時点では痛まないという前提になるわけです。

 ただ、これらのシンジケートローンは実際の建設計画が完全に貸し手側、中国政府の意向で左右されることをも意味します。なんでこんな決定をしたのでしょう、自国のインフラを手がけるのに自国の予算からローン出さないって、まるで日本の高度成長期が終わった直後の地方交付税みたいなものじゃないですか。

 インドネシアでは往々にしてこのような「政治的に鼻薬をかがされた結果の決定」は、汚職や横槍、利益誘導の果てに失敗しており、中国のコンストラクターが入札した造船所や港湾など、中規模以下の無償開発援助も手を付けるまでは早くとも完成に至らないプロジェクトがゴロゴロしています。

 どうせ日本の計画を下敷きに受注されたプロジェクトですし、ほぼ無料というような将来をあまり見越さない受注活動が繰り広げられているのであれば、日本側にさほどのメリットはありません。本当に期日どおりに完成させられるのか、ゆっくり見ているのが一番日本にとってふさわしい態度のように思います。

 個人的には、値引き競争に引き込まれて赤字を垂れ流す決定をするよりは、間合いを見てきちんとした入札条件を出した日本が本件で恥じることはそれほど無いんじゃないかと思うんですが、どうでしょうか。

著者プロフィール


ブロガー/個人投資家

やまもといちろう

慶應義塾大学卒業。会社経営の傍ら、作家、ブロガーとしても活躍。著書に『ネット右翼の矛盾 憂国が招く「亡国」』(宝島社新書)など多数

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