このあとどうなるの!? 続きが気になる“書き出しだけ”の小説「第3回書き出し小説大賞授賞式&表彰式」

デイリーニュースオンライン / 2015年10月23日 11時0分

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「書き出し小説」とは、その名の通り書き出しだけの小説です。

 夏目漱石の『吾輩は猫である』ならば「吾輩は猫である。名前はまだない」だけ、川端康成の『雪国』ならば「国境の長いトンネルを抜けると雪国であった」だけ。

 その後、どうなるんだとツッコみたいところですが、続きは妄想だけで楽しむのが書き出し小説なのです。

「じわじわ来る」「思い出し笑いが止まらない」「二度読みたくなる」などの意見が多い味のある書き出し小説。この度、第3回書き出し小説大賞の表彰式が、お台場・東京カルチャーカルチャーで行われました。

 この書き出し小説はWEBサイト『デイリーポータルZ』で連載されています。表彰式では、これまで『デイリーポータルZ』に掲載された作品の中から優秀な60作品をノミネート。そこから審査員個人賞、大賞などを決定します。



芥川賞作家も参戦! 審査員は豪華メンバー

 書き出し小説大賞の審査員は、書き出し小説大賞の創案者である『デイリーポータルZ』ライターの天久聖一さん、『デイリーポータルZ』編集の林雄司さん、芥川賞作家の長嶋有さん、漫画家のしまおまほさんと豪華メンバー。



 長嶋さんは第一回書き出し小説大賞で、凡コパ夫名義の“大きくひしゃげた眼鏡を、だが男はいつものように持ち上げた”という作品がノミネートされています。

ムーディーにしっとりと朗読、高尚な文学の装い。

 ノミネート作品は、10作品ごとに6ブロックに分けて発表されます。朗読は劇団野鳩の佐伯ちさ子さん。ムーディーな音楽に合わせて、しっとりとした声で読み上げてくれます。佐伯さんの朗読により書き出ししかないミニマムな小説のはずが、なぜだか完成された高尚な文学の装いに。



たった数行なのに引き込まれる! 「名書き出し」が60作品

 それではいくつかノミネート作品を紹介しましょう。

 “キミの食べるはずだった菜の花が咲いてしまったよ。”(作・Xissa)

 こちらの作品は書き出し小説には珍しい二人称。コメディなのか、哀しい話なのかが気になるところです。長嶋さんもお気に入りの様子。

 “あんたんとこ、火事やで。全てを知ったうえで、イルカショーにて手を挙げる”(作・義ん母)

 この作品には会場も大爆笑。小さな火事ではなさそうな予感が漂う作品です。その他にも傑作ぞろい。笑い声が絶えませんでした。

なぜか「性教育ビデオ」も。シュールすぎる書き出し小説を利用した舞台

 各ブロックの合間には、『デイリーポータルZ』のライター・大北栄人さんのコントユニット『明日のアー』による舞台が行われました。これまで『デイリーポータルZ』上で発表された書き出し小説を取り入れながら、天久さんが脚本を担当しています。

 “朝顔は咲かなかったし、君は来なかった”という作品をベースにした舞台。 レーズンを抜かれたコッペパンからはじまり、ターバン野口が登場し、性教育のビデオで終わるという、一歩間違えば危なくなりかねないシュールな舞台でした。



いよいよ、個人賞、読者賞、大賞の発表!!

 今回は長嶋さんも作品を発表しました。

 “アメリカンドッグはアメリカにはない。”

これは長島さんのエッセイの冒頭でも使用したそうです。ノミネート全ての作品紹介が終わると各賞が発表されました。まずは、個人賞の発表。

林雄司賞
 “お祖母さまは徘徊中にいくつかの大会を制した。”(作・横尾モスラ)

林さん「家でスライド(本日のスライドは林さんが作成)を作っている時に、これおもしろいよと妻に見せました」
長島さん「徘徊が終わった状態からはじまるのがおもしろいですよね。今は家にいるっていう。すごく技がありますね」

しまおまほ賞
 “ストーブから近い順に仏像が熱い。”(作・TOKUNAGA)

しまおさん「研ぎ澄まされた空間でパチパチと火の音だけが聞こえそうなときに、よぎる雑念のような感じがいいと思いました」

 受賞したTOKUNAGAさんは、書き出し小説対象の常連さんだそう。

長島有賞
 “ロボットが人間に始めてついた嘘は「似合っていますよ」だった。”(作・もんぜん)

長島さん「ウケ狙いのようにも、真面目なようにも感じもしました。『似合っていますよ』という敬語も優しくて、この一文だけでも優しさがありますよね。すごく温かいストーリーになっていきそうな気がします」

天久聖一賞
 “飛ばしたシャンプーハットは青空と海を割り水平線の一転をピンクに染めた。”(作・Prefab)

天久さん「すごく映像が浮かびスケールが大きい作品でした。一瞬で絵が浮かんできて、Prefabくんの代表作になるのではないでしょうか」

読者の投票から選ばれる読者賞
 “バカが気球を買った。”(作・正夢の3人目)

天久さん「バカという言葉をこれだけシンプルに純度高く表現したものはないんじゃないかなと思います。明るい気持ちになりますしね」

大賞
 “「そこの蚊柱を右折して下さい。」”(作・義ん母)

林さん「綺麗に短くて締まっていていいですね」
しまおさん「すごく好きです。柱って書いてあっても柱だと思うなよ。という感じがいいですね。実体がないけれど、力強い蚊柱が立っているんだろうなという感じがしました」
長嶋さん「セリフもシンプルでいいですね。冷静な口調もいいです」
天久さん「この作品は書き出し小説大賞の中ではトリッキーだと思うんですよね。どれが大賞をとってもおかしくない作品が並んでいる中であえて、一番間違っている作品を選びました。幻みたいな作品ですよね。その蚊柱を曲がったら異世界に行きそうじゃないですか(笑)」

 セリフだけで終わっているところもシュールな感じを醸し出しています。設定はタクシーの中らしく、この後のやりとりがとても気になりますね。義ん母さんには賞品のベレー帽が贈られました。



 最後に、ライター舟崎が個人的に気に入った作品をご紹介します。

 かなり迷いましたが、結構好きだったのが「キミの食べるはずだった菜の花が咲いてしまったよ。」

 そして「ひとりしきりの雨、クローン人間と深いキスをした。宿は、生徒会室だ。」が、文学的には一番好きです。

 会場でも話題になりましたが、クローン人間が自分のクローンなのか気になりますね。もし自分ではないとしても、クローン人間との学園もの? という設定も気になります。

 笑ったのは「もう米のことなどどうでもいい平八郎だった。」です! 最初のきっかけは米かもしれませんが、だんだん気持ちが高ぶって米はどうでも良くなったのでしょうか(笑)

 恋人とケンカをしてヒートアップしたら、最初のきっかけを忘れてしまうみたいなこと、みんなあるんじゃないかなと思います。受賞作品は、新人さん、常連さんの入り混じる激戦でした。今後どんな作品が出てくるか楽しみですね。

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(取材/舟崎泉美)

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