Amazon規制に各業界が苦悩…国連の規制推進で性表現が変わる?

デイリーニュースオンライン / 2016年3月30日 11時4分

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 日本の性表現規制をめぐる動きが活発化している。三次元だけでなくマンガやアニメといった二次元においても表現規制をすべきとの意見が海外や女性団体から上がっており、それに各業界が反発。熱い議論が繰り広げられているが、それをよそに小売り業者による「自主規制」が強まり、否応なく自粛せざるを得ない状況に陥ろうとしている。

■国連が「日本は性的搾取表現の主要製造国」と指摘

 今年2月、スイスのジュネーブで開かれた「国連女子差別撤廃委員会」において「女性に対する性的暴力を描写したビデオゲームや漫画の販売禁止」が審議された。日本は特に問題視されており、同委員会は「日本はポルノ、ゲーム、漫画、アニメが、女性や少女への性的暴力を推進している」と指摘。さらに「バーチャルな子供を性的搾取する表現の主要製造国」とまで言い放った。

 同委員会はアダルト作品はもちろん、一般向け作品も性的暴力を描写したものは全て販売禁止にすべきと提言。これに同委員会が守るべき対象としているはずの日本の女性たちが反論した。女性クリエイターで構成された「女子現代メディア文化研究所」が公式サイト上に意見書を公開し、同委員会の主張は女性の権利を保障するためには「妥当ではない」と断じた。

 同研究所は「漫画やビデオゲームといった創作物上の実在しない対象への性的暴力は、実際の人権侵害ではありません。実在する女性への人権侵害の問題にこそ早急に取り組むべき」と主張。さらに多数の女性作家が活躍している少女マンガの世界は「性」が重要な要素になった作品が多いことから「規制すれば女性の活躍の場を奪う」と指摘。

 委員会のスタンスは逆に女性にとって不利益になると論じているが、この正論としか言いようのない訴えに国連が耳を傾けるかは不透明だ。

■成人向け雑誌の目隠し問題で業界団体が猛反発

 雑誌の分野でも大きな動きがあった。大阪府堺市が「コンビニに並ぶ成人雑誌を子供が目にする機会を減らすため」としてファミリーマートと協定を結び、濃い緑色のビニールカバーで雑誌を覆う取り組みを開始したのだ。同市は国連における女性の権利のための機関「UN Women」の活動に参加しており、外部有識者からの「コンビニは性表現が氾濫している」との指摘をきっかけに導入が決まった。

 目隠しカバーは表紙の大部分が隠れてしまうが、コンビニ側は「売上は下がるかもしれないがイメージアップにつなげたい」としている。

 だが、これにも業界団体が猛反発。日本雑誌協会と日本書籍出版協会が同市に公開質問状を送付。両協会は「雑誌や書籍類の表紙は、編集者、デザイナーなど多くの人たちが知恵を絞り、読者に制作の意図など思いのたけを伝えようと作り上げたものであり、読者も購入するか否かを決める重要な手がかりとしているもの」とし、恣意的な規制強化につながると懸念している。

 大阪府では青少年健全育成条例によって「有害図書類をビニール包装やヒモ掛けなどで容易に閲覧できない状態」にするよう規定されている。だが表紙まで隠すべきとはしておらず、両協会は「条例を逸脱した行為」「表現の自由に侵害している」と主張している。

 この是非については賛否あるが、同市が条例の規定を逸脱しているのは疑いようがない。だが問題をややこしくしているのは民間業者が介在している点だ。あくまで同市は「市の趣旨に賛同してもらえるようお願いした」というスタンスであり、主体は小売りのコンビニ側という構図。条例を根拠にした強制ではないというのだ。

■誰も止められない「小売りの自主規制」

 ネット通販最大手のAmazonがグラビアアイドルのイメージDVDに大規模規制をかけたとの報道も話題になった。3月20日付の『東京スポーツ』が報じており、露出度などでAmazonの基準をクリアしていない作品は販売しない方針になったという。

 これは当事者にすれば死活問題。Amazonに「不合格」とされれば問答無用で販売できなくなり、大幅な売上減を覚悟しなくてはならない。すでにイメージDVD販売からの撤退を宣言する出版社やメーカーも出てきているという。

「法律や条例に対しては抗議も可能ですが、小売りの自主規制は基本的に誰も口が出せない。異論を唱えれば、逆に小売りのポリシーの自由を侵害してしまうことになる。しかし、Amazonやファミリーマートのような大手の規制はそれだけで致命傷。法律より国連より、小売りの自主規制の方が恐ろしい問題なんです。DVDだけでなくアダルトコミックなどの分野でもAmazonの規制は強化され、同社の基準に合わせて作家に描かせるようにしている」(出版関係者)

 特にAmazonのような国際的な企業は「人権を守る」というお題目に迎合しやすい。世界に誇る日本のコンテンツを守るためにも政治家の活動に期待したいが、それにも大きな問題があるという。

「山田太郎参院議員のように表現規制問題に真剣に取り組んでいる人物もいますが、票に結びつきにくいために大多数の政治家にとってはあまり関心のない問題。どうしてもイメージアップにつながりそうな規制派の『人権を守るため』という主張に安易になびいてしまう。反対すれば『お前もロリコンか』『ポルノ好きか』と思われかねないという心配もある」(政治関係者)

 女性や子供の人権を守ることに誰も異論はないが、その勢いに任せて不当に表現の自由を侵害するようなことがあってはならない。しかし小売りの自主規制を止めるすべはなく、各業界は頭を悩ませることになりそうだ。

文・佐藤勇馬(さとうゆうま)

※個人ニュースサイト運営中の2004年ごろに商業誌にライターとしてスカウトされて以来、ネットや携帯電話の問題を中心に芸能、事件、サブカル、マンガ、プロレス、カルト宗教など幅広い分野で記事を執筆中。著書に「ケータイ廃人」(データハウス)「新潟あるある」(TOブックス)など多数

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