【永田町炎上】ほとんど言いがかり?”違憲訴訟”を弄ぶ不埒な面々

デイリーニュースオンライン / 2016年7月31日 17時5分

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【朝倉秀雄の永田町炎上】

■イデオロギーを裁判所に持ち込む「違憲訴訟マニア」

 世の中には趣味か道楽か知らないが、結果は見えているのに、性懲りもなく「原発稼働の差し止め」であろうが「選挙の無効」であろうが何でもかんでも裁判に訴えようとする「訴訟マニア」と呼ばれる奇態な人種がいる。

 4月20日には安保法制に反対する弁護士らで作る「安保法制違憲の会」なる団体が集会を開き、市民ら約500名が「安保法制によって憲法が保障する『平和的生存権』を侵害され、精神的苦痛を受けた」などと主張して国に国家賠償と他国軍への後方支援などの差し止めを求める行政訴訟を起こす方針を明らかにした。

 6月8日にはやはり弁護士らで作る市民グループ「『戦争法』違憲訴訟の会」に賛同した関西の市民ら713名が国に賠償と自衛隊出動の差し止めを求める二つの訴訟を大阪地裁に起こすなど、この種の動きは全国に広がりつつある。イデオロギーを司法の場に持ち込もうとする不埒な連中だ。

■提訴理由はほとんど「言いがかり」に近い

 むろん安保法制は単に国会で成立し、3月に施行されたというだけで、今のところ自衛隊は具体的な行動を何も起こしていないのだから、誰の権利も侵害していない。「平和的生存権が侵害された」などというのは、タチの良くない「言いがかり」に過ぎない。

  安保法制の廃止や違憲性の確認を求める訴えは昨年にもあったが、平成27年10月8日、東京地裁は「法律が憲法に適合するかどうかの判断を抽象的に求めるものであり、審判対象にならない」として口頭弁論さえ開かず「門前払い」を喰らわせている。

 具体的な権利や利益の侵害は何もなく、そもそも「法律上の争訴」にならないのだから、当然のことだろう。

■全然説得力のない最高裁判決

 最高裁は過去、衆院選については12回、参議院選については14回憲法判断をしているが、今回の参議院選についても、「一票の格差が最大3.08倍だったのは選挙権の平等を保障した憲法に違反する」などと主張して弁護士グループなどが全45選挙区の選挙無効を求めて全国の8高裁と6高裁支部に一斉に訴訟を提起。別の弁護士グループも東京と神奈川、広島の3選挙区でも選挙無効とやり直しなどを高裁に訴えている。

  むろん裁判官たちも選挙を「違憲無効」としてしまったら、どれほどの政治的混乱を招くかわかっているし、「最強の安倍官邸」からどんな報復を受けるかわからないから、格差比率によっては「違憲状態」と判示されることはあるだろうが、選挙自体の効力を否定することはありえない。

 判例によれば、(1)投票価値の平等を求める憲法に違反する状態だったがどうか、(2)格差是正に必要な期間を過ぎていないかの2つの基準によって判断され、(1)の違反だけが「違憲状態」、(2)も認められると「違憲」ということになるらしいのだが、筆者にはとても説得力があるようには思えない。

 なぜなら平成16年7月の格差5.13倍の参議院選を「合憲」としながら、22年7月の選挙の5.00倍や25年7月の4.77倍を「違憲状態」としているからだ。格差が大きい方が「合憲」で、小さい方が「違憲状態」などというバカな話はない。

■果たして憲法は「一票の価値」の平等まで保障しているのか?

 ところで憲法は、「投票価値の平等」まで保障しているのであろうか? かつて最高裁は昭和39年2月5日、格差が4.09倍だった昭和37年7月1日の参議院選について「選挙に関する事項の決定は原則として立法府である国会の裁量的権限に属しており…その他の条項も、議員定数を選挙区別の選挙人の人口数に比例して配分すべきことを積極的に命じている規定は存在しない。

 …議員数の配分が選挙人の人口に比例していないという一事だけで、憲法14条1項に反し無効であると断じることはできない」として、基本的には「否定説」の立場をとっていた。

 流れが変わったのは、格差が4.99倍だった昭和47年4月の衆議院選からである。「肯定説」に豹変した最高裁は「一票の格差」について「違憲審査」をするようになり、昭和51年4月14日の判決は初めて「違憲」の判断を下している。以来、最高裁は衆参両選挙ともに「違憲」や「違憲状態」判決を濫発するようになる。

■民主的背景を持たない裁判官は「政治問題」に口を出すな!

「衆議院の解散」や「日米安全保障条約」といった「国家統治の基本に関する高度な政治性を有する国家の行為」は「司法府による審査には馴染まない」として、裁判所自らが憲法判断を回避する「統治行為論」というのがある。

 当然、「選挙無効訴訟」の被告である国側は「統治行為論」を主張するが、最高裁はこれを採用せず、「立法府の裁量論」で処理する傾向があるようだ。「議員定数配分」というのは、選挙の「土俵」をどう決めるかであり、政党同士の党利党略が複雑に絡み合い、より「高度な政治性」を有する問題なのだから、民主的な背景を持たない裁判官などがみだりに嘴を挟むことではなく、国民から信託を受けた議員で構成する国会の裁量に委ねるのが民主主義というものだろう。

  昨今は福井地裁の樋口英明や大津地裁の山本善彦のような下級審の裁判官の中には、法律の専門家かもしれないが、原発の知識など皆無に等しい「素人」のくせに、偉そうに国のエネルギー政策に嘴を挟み、関西電力高浜原発3、4号の再稼働の差し止めを命じる判決を下したり、運転差し止めを命じる仮処分の決定を命じる者もいるが、身の程を知るべきであろう。

文・朝倉秀雄(あさくらひでお)
※ノンフィクション作家。元国会議員秘書。中央大学法学部卒業後、中央大学白門会司法会計研究所室員を経て国会議員政策秘書。衆参8名の国会議員を補佐し、資金管理団体の会計責任者として政治献金の管理にも携わる。現職を退いた現在も永田町との太いパイプを活かして、取材・執筆活動を行っている。著書に『国会議員とカネ』(宝島社)、『国会議員裏物語』『戦後総理の査定ファイル』『日本はアメリカとどう関わってきたか?』(以上、彩図社)など。最新刊『平成闇の権力 政財界事件簿』(イースト・プレス)が好評発売中。

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