北の農場が「闇金」に頼る理由

デイリーNKジャパン / 2018年6月13日 7時12分

デイリーNKジャパン

北朝鮮の燃料価格は、国際社会の制裁の影響を受けて乱高下を繰り返してきたが、最近になって下落に転じたと伝えられている。

米政府系のラジオ・フリー・アジア(RFA)は、最近平壌を訪れた中国朝鮮族のビジネスマンの話として、ガソリン1キロ(1.34リットル)の価格が1.7ドル(約189円)で、最も高かったころの2.5ドル(約275円)と比べてかなり安くなり、中国と変わらないと報じた。

これを受け、長距離バスも最近になって運行を再開した。一方、その予算すらない事業所も少なくない。その代表例が協同農場だ。北朝鮮の平野部は田植えのシーズンに突入しているが、燃料不足に悩まされている。

平安南道(ピョンアンナムド)の情報筋によると、平城(ピョンソン)市の慈山(チャサン)協同農場は、田植え実績が最も良好だと評価されているが、それにはからくりがあった。

「国は燃料を配給しないのに『田植えをシーズン中に終えろ』とうるさい。そのため農場は、商人から農業機器ようの燃料をツケで購入して田植えを行っている」(情報筋)

慈山協同農場など、現段階で田植えを半分以上終えられたところは、このようなツケで燃料を確保し田植え機を使っている。秋の収穫後に倍にして返済する条件で、商人から燃料を確保したのだ。一方、燃料を確保できなかった農場は、いつ田植えが終えられるか見通しが立たない状況だ。

デイリーNKは先月、道内の文徳(ムンドク)郡の協同農場が、農作業に必要な肥料、農薬などをほとんど確保できていないことを報じたが、担当者に手腕がなければ、農場全体が困窮してしまう。

慢性的に供給が不足している肥料を得るためには、肥料工場の近隣に冬から泊まり込んで順番を待つなど、涙ぐましい努力が求められる。

このような「ツケ」は、今に始まったことではない。

「(1990年代後半の大飢饉)苦難の行軍の後から、協同農場は毎年春になるとトンジュ(金主、新興富裕層)からカネを借りて、ビニール膜、肥料、農薬を市場で購入するようになった」(情報筋)

ところが、当局がヤミ金営業をおこなっているトンジュに対する取り締まりを強化してからは、「ツケ」の形にして秋の収穫後に2倍にして返す習慣が定着した。しかし、返済が滞ることも少なくない。

北朝鮮の農業は、病虫害や災害に極めて脆弱で、収穫量が減ることが多いのだが、政府は収穫量に関係なく、軍糧米(軍に供給する食糧)として収穫の一定量を徴収する。そのため、返済原資がなくなってしまうのだ。

地域の事情を無視した無理な供出は、時に取り返しのつかない悲劇を生んでしまう。2012年に穀倉地帯の黄海南道(ファンへナムド)で数万単位の餓死者が発生した。当局が、金正恩党委員長の政権就任を祝う「どんちゃん騒ぎ」用の食糧を徴発したことで、極度の食糧不足に陥ったためだ。

もちろん、「ツケ」もヤミ金とみなされるため、訴訟になると処罰を受けるのはトンジュの方だ。最悪の場合、教化所(刑務所)送りにされてしまう。そのような事態に備えてトンジュは、協同農場の幹部に「ツケの取り引き」を持ちかけられても、簡単に首を縦に振らない。

保安署(警察署)、検察から「問題ない」との確約が得られてようやく取引に応じる。もちろん、それにワイロが欠かせないのは言うまでもない。

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