「海水でコロナに感染する?」金正恩の出漁禁止命令で食糧難が加重

デイリーNKジャパン / 2021年1月20日 7時5分

朝鮮人民軍第15号水産事業所を現地指導した金正恩氏(2016年12月15日付労働新聞より)

新型コロナウイルスの感染者が比較的少なかった中国東北の吉林省。ところが、ここに来て状況が急変している。

吉林省衛生健康委員会は今月11日、隣接する黒龍江省綏化から列車に乗って吉林省長春の自宅に戻った男女4人のコロナ感染を発表した。そこから次々に感染が広がり、18日24時の感染者数は、長春44人、松原4人、そして通化123人だ。

通化に含まれる集安は、川をはさんで北朝鮮の慈江道(チャガンド)満浦(マンポ)と向かい合う。北朝鮮は国内でのコロナ感染者発生を認めていないが、その喉元までウイルスを突きつけられた状況となっている。

北朝鮮は国境封鎖などに加え、密輸、元脱北者などの密入国が起きた地域に封鎖令(ロックダウン)を敷くなど、過剰とも言うべき反応を示している。その内のひとつである漁船の出漁禁止措置が、深刻な食糧難を加重している。米政府系のラジオ・フリー・アジア(RFA)が報じた。

(参考記事:【北朝鮮国民インタビュー】突然のロックダウンで生活困窮、餓死者も

平安北道(ピョンアンブクト)新義州(シニジュ)の情報筋は、昨年1キロ4000から5000北朝鮮ウォン(約48円〜60円)で売られていたハタハタが、今では1万8000から2万北朝鮮ウォン(約216円〜240円)になっていると伝えた。

また、ニシンはほとんど見かけず、あっても1キロ3万3000北朝鮮ウォン(約400円)、スケソウダラは4万5000北朝鮮ウォン(約540円)で、いずれも市場が開設されて以降最高値を記録した。当然、多くの市民には手の出せない高嶺の花となってしまった。

昨年末、ハタハタが豊漁となり、東海岸の清津(チョンジン)や咸興(ハムン)市場では、例年の半分以下の価格で売られ、食糧難に苦しむ庶民が飛びついていると伝えた。

(参考記事:北朝鮮沿岸でハタハタ大漁…食糧難の救世主になるか

ところが、「当局がコロナ防疫を最高非常段階に引き上げ、漁船の出漁を統制」(情報筋)するようになり、各地の水産事業所は、出漁禁止措置で漁に出られずにいるようだ。

(参考記事:北朝鮮が「超特級非常防疫措置」発動…移動制限は50日間

韓国の国家情報院は昨年11月、韓国国会情報委員会での報告で、金正恩氏が海水からのコロナ感染を恐れて、海での漁と塩の生産を禁じたと明らかにしているが、これが、魚類の価格高騰、品薄を招いていると思われる。

(参考記事:「常識を失っている」金正恩“過剰激怒”で処刑を乱発…韓国情報機関

平安南道(ピョンアンナムド)の情報筋は、北朝鮮の物資流通の中枢のひとつである平城(ピョンソン)市場で、スケソウダラ1キロが5万北朝鮮ウォン(約600円)という史上最高値を記録したと伝えた。

しかし、深刻な食糧難に苦しむ朝鮮人民軍(北朝鮮軍)は、ヤミ出漁に踏み切った。

咸鏡北道(ハムギョンブクト)の情報筋によると、朝鮮人民軍系の外貨稼ぎ水産事業所は、防疫当局に対して、栄養失調になる兵士たちが続出しているとして、出漁禁止措置を緩和するように訴えた。その後、一部の漁船が漁に出るようになったが、正式の許可を受けたわけではないようだ。

「現在、平城や新義州など内陸地域の市場で売られている東海岸で水揚げされた魚は、当局の黙認のもとに漁に出ている軍所属の漁船が取ったものだ」(情報筋)

水揚げすべてを軍に供給するのではなく、一部を市場に流して儲けているとのことだ。担当者が私腹を肥やすための横流しなのか、燃料費を稼ぐために計画的な販売なのかは不明だ。

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