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「どんちゃん騒ぎ」で銃殺も…春の訪れで北朝鮮当局が警戒

デイリーNKジャパン / 2021年3月18日 6時52分

北朝鮮で初めて行われた「ビール祭り」(朝鮮中央通信)

北朝鮮に春がやってきた。韓国気象庁の予報によると、平壌の最高気温は今週以降概ね10度以上、19日には18度まで上がることが予想されているなど、北部山間部を除きポカポカ陽気が予想されている。

そうなれば、人々の考えは何処も同じ。満開の桜の下や緑の戻った草原で飲めや歌えやのどんちゃん騒ぎ。娯楽が少なく、酒好き、踊り好きのお国柄だけあって、家族や職場単位でのピクニック、宴会があちこちで繰り広げられる。

(参考記事:北朝鮮の生活や食事の実態!富裕層と庶民の食生活を比較

そんなことはお見通しを言わんばかりに、北朝鮮当局は早々と釘を差した。
新型コロナウイルスの国内拡散に神経を尖らせている当局は、住民に対してどんちゃん騒ぎを厳しく戒めた。

デイリーNKは北朝鮮現地の情報筋を通じて「住民政治事業資料 朝鮮労働党第8回大会の精神を高く奉じ、国境秩序と非常防疫戦の妨げとなる行為との闘争を強力に繰り広げよう」と題された内部資料を入手した。住民を対象としたコロナ対策教育の資料は、このような文章から始まる。

今、道内の全人民たちは、朝鮮労働党第8回大会で提示された戦闘的課業を高く奉じ、自力更生、自給自足の旗高く、道の経済発展と人民生活向上のための闘争をう果敢に展開している中で、非常防疫戦をさらに強力に繰り広げている。

しかし、われわれの周りでは、未だに激動する時代に背を向け、自分ひとりの利益だけを追求して、国境秩序を違反し、非常防疫戦に妨げになる現象がなくなっていない。

その実例として挙げられたのは、以下の2例だ。

※金亨稷(キムヒョンジク)郡の地境里(チギョンリ)にある道探査管理局風船地質探査隊のリム某は1月12日、従業員と家族を集めて酒の席、会食を行った。

※恵山(ヘサン)市の塔城洞(タプソンドン)に住むシム某は1月31日、封鎖と自宅隔離に自主的に参加することについての教養事業を受けたのに、複数の人を呼び飲んで食べて、歌って踊り、非常防疫事業に逆行するむちゃくちゃなことした。

事件報道がほとんど行われない北朝鮮だが、住民相手の政治講演会などでは、実際に起きた事例を取り上げることで、好奇心を誘発するというやり方がよく使われる。

北朝鮮は昨年12月から超特級非常防疫措置を敷いているが、これは地上、海上、空中などすべての空間を封鎖し、あらゆる集まりと学校を中止するものだと、非常防疫法は定めている。

しかし、終わりの見えないコロナ対策、それがもたらす経済難、食糧難が悪化一路をたどっている状況で、違反者は重罰に処すという当局の警告にも、「もう我慢できない」と違反をしてしまう人が続出。春の到来と共に違反事例がさらに増えることを警戒し、改めて政治講演会と資料配布という形で警告を下したようだ。

この資料には、違反に対してどのような処罰が下されたかは明記されていない。ただ、別の情報筋は昨年12月、規則違反者は一般住民、幹部、軍人など地位や職業を問わず、すべて党の政策に違反した反抗者として、程度のひどい者や首謀者は銃殺、残りは国家保衛省(秘密警察)預かりとし、管理所(政治犯収容所)に送り込んでいると伝えている。

ちなみに昨年7月、ある税関幹部一家がコロナ対策を破って「船上パーティー」を開いていたことが発覚。家長が見せしめで処刑された可能性がささやかれている。

(参考記事:金正恩の命令違反…幹部一家「船上パーティー」で処刑の危機

さらに資料は、中国キャリアの携帯電話を使った人に対する警告も発している。

党は、人民の生命、安全を守り、人民生活を向上させるために、全力を尽くしているのに(中略)中国の携帯電話を使用し、非常防疫事業に逆行するこのような者どもを一体いかに見るべきか。

携帯電話を通じてウイルスが感染すると考えているわけではなく、密輸や脱北の算段をしているであろうことを問題視しているのだろう。

資料は、携帯電話の使用を「わが社会で絶対に許されざる反国家的、反社会主義的行為」で、使用者は「党の愛、社会主義制度のありがたみを知らぬ人間のクズ、恩知らず」とした上で、「革命の名のもとに無慈悲にぶん殴らなければならない」「この者どもとの闘争を全群衆的に繰り広げなければならない」としている。

また、資料は、マスク着用、消毒、検温を徹底し、便乗値上げや「流言飛語を広げ、民心を乱す現象、不順出版宣伝物を密かに見たり流布したりする現象」も、「われわれの社会政治的安定と一心団結の妨げになる反国家的、反人民的行為」と罵っている。

これは、韓流ドラマ、映画などの韓流コンテンツ、海外の映像やラジオ放送、アダルトビデオ(AV)などをターゲットにした「反動的思想・文化排撃法」が背景にあるものと思われる。

(参考記事:金正恩命令で公開処刑…ある夫婦がハマった「危ない愉しみ」

資料は規則違反者に対する非難ばかりというわけではない。

封鎖期間の生活上の困難を抱えた人、苦しんでいる人たちを助け、慰めて集団主義の気風を高く発揚し、一つの大家庭を成した我が社会の風貌を余す所なく発揚されるようにしなければならない。

この資料が配られた両江道を始めとする国境地域では、昨年来封鎖令(ロックダウン)が繰り返し下されている。外出が禁じられた状態で食糧が底をつき、餓死する人が相次ぐなどして、市民の不満が高まっている。「共助」でそんな不満を少しでも抑えようという意図が感じられなくもない。

しかし、「公助」がほとんど行われていない状況で、「自助」や「共助」を求める今回の資料は、評判が悪い。当局は食糧配給もしないくせして、慰め合って危機を克服せよというばかりで、呆れて物が言えないとのリアクションが出ていると情報筋は伝えた。

(参考記事:ロックダウンわずか1日で解除…北朝鮮「コロナ対策」の朝令暮改

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