金正恩の「トラウマ」が阻む、北朝鮮観光の本格再開
デイリーNKジャパン / 2024年5月11日 4時1分
北朝鮮は今年2月、コロナ後で初めてとなる外国人観光客の受け入れを行った。ロシア人観光客を少なくとも5回に分けて受け入れたが、最大の上客だった中国人観光客の受け入れは未だ再開されていない。
それが、ここに来てようやく受け入れ再開の動きが出始めた。
(参考記事:「興味深い体験だった」コロナ後初、北朝鮮を訪れたロシア人観光客のホンネ)
北朝鮮を専門的に取り扱うヤング・パイオニア・ツアーズ(YPT)は、自社のサイトで、中国国境に面した新義州(シニジュ)が開放される可能性があると明らかにした。また、同社の代表が丹東中国国際旅行社から得た情報として、中朝両国の高官が、北朝鮮観光の再開について協議しているとも明らかにしている。受け入れ再開は早ければ今月末になると見られている。
(参考記事:北朝鮮ツアー、北朝鮮旅行は今後どうなる…実は近くて普通に行けるおすすめ北朝鮮ツアー・北朝鮮旅行)
新義州はコロナ前、中国人観光客がパスポートなしで日帰りツアーで訪れられるところで、郊外の東林(トンリム)を含めたツアーも人気だった。
YPTのローワン・ベアード代表は、米国の北朝鮮専門ニュースサイト「NKニュース」の取材に、新義州にはコロナ前、1日約30万人の中国人観光客が訪問していたと明らかにした。
国連安全保障理事会の対北朝鮮制裁の規制対象にならない観光業は、北朝鮮にとって手堅い外貨収入源だった。コロナ前にはオーバーツーリズム気味で、一時的にキャパシティを超えたため、受け入れを制限したことさえあった。
しかし当面、受け入れは国境沿いの都市に限られるようだ。
米ランド研究所のブルース・ベネット研究員は、米政府系のラジオ・フリー・アジア(RFA)の取材に、次のように答えている。
「北朝鮮は外貨を求めているが同時に用心深くなっている。K-POPやドラマなどの韓国の文化コンテンツが中国に溢れていることを知っているからだ。中国人観光客の受け入れを再開すれば、政権が望まない外国からの情報の相当な流入が予想される。」
(参考記事:北朝鮮の女子高生が「骨と皮だけ」にされた禁断の行為)
北朝鮮は、体制を揺るがしかねないとして、今まで以上に韓流の取り締まりを強化しているが、流入は止まらず、いたちごっことなっている。同時に思想教育も強化しているものの、対象となっている若者の反応は冷淡だ。韓流の影響を受けて一度変わってしまった人々の考え方を、元に戻すのは非常に困難だろう。
(参考記事:「頭がおかしくなった」国に従順な同世代に向けられる北朝鮮の若者の冷たい目)
また、北朝鮮は、韓流以外にも、感染症の流入を極度に恐れている。貧弱な医療体制でコロナと闘うことを強いられたトラウマだろう。しかし、新義州の開放だけでは客単価は低く、より儲けるには平壌や他の地域も開放しなければならない。
朝鮮には「ウジ虫が怖くて醤油が仕込めるか」ということわざがある。多少のリスクがあってもやるべきことはやらなければならないという意味だが、金正恩総書記は韓流と感染症というウジ虫に相当ビビっているようだ。
外部リンク
この記事に関連するニュース
-
韓国コスメ「偽物」北朝鮮で流行…「かゆみ・むくみ」被害多数
デイリーNKジャパン / 2024年5月28日 6時20分
-
「誰も使おうとしない」金正恩の通貨が“紙くず”になる日
デイリーNKジャパン / 2024年5月25日 4時2分
-
「いわく付き作品」で外貨稼ぎ…北朝鮮の無名画家たちのセレクション
デイリーNKジャパン / 2024年5月21日 6時21分
-
北朝鮮警察も手を焼く「乱れた列車」でのやりたい放題
デイリーNKジャパン / 2024年5月18日 4時2分
-
「市場にコメが出回らない」上昇を続ける北朝鮮の穀物価格
デイリーNKジャパン / 2024年5月8日 5時11分
ランキング
-
1北朝鮮の汚物風船、韓国で被害続出…旅客機運航に支障、車のフロントガラス粉々に
KOREA WAVE / 2024年6月3日 20時0分
-
2「靖国神社は侵略戦争の象徴」 中国外務省が落書きで主張、「外国では理性的に」と注意も
産経ニュース / 2024年6月3日 19時11分
-
3メキシコで初の女性大統領誕生へ、前メキシコ市長のシェインバウム氏が勝利宣言
読売新聞 / 2024年6月3日 16時25分
-
4NATO諸国、ウクライナ支援の方針転換でプーチンの警告を無視
ニューズウィーク日本版 / 2024年6月3日 17時40分
-
5カーン元首相に逆転無罪=機密漏えい事件、収監は継続―パキスタン
時事通信 / 2024年6月3日 22時23分
記事ミッション中・・・
記事にリアクションする
記事ミッション中・・・
記事にリアクションする
エラーが発生しました
ページを再読み込みして
ください