教師による「恐喝」が横行…金正恩の学校教育が末期症状
デイリーNKジャパン / 2024年5月27日 9時47分
北朝鮮第2の都市、咸興(ハムン)市内の小学校で今月、保護者が押しかけてきてわめきたて、教師に暴力を振るう事件が起きた。「モンスターペアレント」ではない。むしろ、教師のほうがモンスターだったのだ。現地のデイリーNK内部情報筋が伝えた。
事件が起きたのは今月10日のことだ。咸興市興南(フンナム)区域の小学校の3年生のクラスに、授業中にもかかわらず保護者が乱入した。
児童の見守る中で、担任教師の胸ぐらをつかみ激しく揺さぶった。そして、こう叫んだ。
「学校が出せというカネを出せなかったからと、うちの子を叩くとはどういう了見だ。自分の子どもだと考えてみろ。体罰を受けて一人で苦しんでいたんだ。親として胸が張り裂けそうだ」
あまりの大声に驚いた他のクラスの教師や児童が教室から飛び出るなど、学校は大騒ぎとなった。保護者は「こんなことをされるならもう子どもは学校にやらない」と言って、子どもを連れ帰った。
(参考記事:かつて「職業的革命家」と呼ばれた北朝鮮の教師、モンスターペアレントと闘う)
北朝鮮の学校は、児童・生徒に古紙や古ゴム、くず鉄、木の実、動物の皮など様々な物品の供出を強いている。また、あらゆる名目で金銭を徴収する。また、教師も保護者に様々な金品の要求をする。出せなければ様々な制裁が加えられる。
担任教師は昨年12月、社会的課題(金品の供出)ができなかった5人の生徒を教室の前に立たせて、ムチでふくらはぎと背中を3回ずつ叩き、1週間廊下の掃除をさせる体罰を与えた。5人はいずれも親には黙っていた。学校で起きた事件は外で話さないことが一種の「校則」になっており、教師からも口封じをされたからだ。
これでは「恐喝」、あるいはそれ以上の犯罪行為とも言える。
金正恩総書記の進める市場抑制策、国家主導の経済システム再構築の煽りを受けて、多くの人が貧困と飢餓に苦しむ現状で、学校や教師から要求を突きつけられても、出せないという人が多い。その影響で出席率が著しく低下していると指摘されている。
(参考記事:学校をやめて父親を養う北朝鮮の少年「くるまクン」)
「貧しい家の子どもたちは、登校すると担任教師からいびられるので皆しゅんとしている。家族を食べさせるために苦労している親と、金品を出せと要求する学校や教師との板挟みになって苦しんでいる」(情報筋)
(参考記事:女子大生40人が犠牲…北朝鮮幹部「鬼畜行為」で見せしめ)
この事件を受けて、学校は教師集会を開き、事件の再発を防ぐとしたが、その学校が子どもたちに様々な要求を突きつけている現状で、再発防止は難しいだろうと情報筋は見ている。
一方で、件の保護者は咸興市人民委員会(市役所)の教育部に訴えてやると息巻いているが、実際に訴えるかはまだわからない。この話は人口77万人の咸興全域にあっという間に広がり、市民の間では、子どもへの負い目を感じたり、学校が強いられる税金外の負担に不満を述べたりする人が増えているとのことだ。
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