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「国のせいで作物が壊滅」北朝鮮”お役人農業”のポンコツ度

デイリーNKジャパン / 2024年5月30日 8時31分

金正恩氏が江原道被災地農場を視察した(2023年8月18日付朝鮮中央通信)

北朝鮮北部の両江道(リャンガンド)の春の訪れは遅い。今月16日の朝には、氷点下5度まで下がり、畑には霜が降りた。平均海抜1338メートルの高地にあるためだ。

この地域で農業はさほど発展していない。コメは基本的に他の地方から輸送してくる必要がある。道路交通網が発達していないため、キャベツやレタスを作ったとしても、道外に出荷ができない。作物のほとんどは、ジャガイモとトウモロコシだ。

そんな地域の特性を無視して下された命令が、わずかばかりの農業をダメにしてしまった。米政府系のラジオ・フリー・アジア(RFA)が報じた。

現地の農業部門の情報筋は、三池淵(サムジヨン)、大紅湍(テホンダン)、普天(ポチョン)、雲興(ウヌン)、白岩(ペガム)など、道内でも標高の高いところにある農場で、霜の被害が確認されたと伝えた。

内閣農業委員会は今月3日、次のような命令な命令を下した。

「全国が力を合わせて田植えと草取りを前倒しで終えよう」

そして、農村支援総動員令をかけた。人を大量動員して農村に送り込み、田植えを一気に終えるというものだが、問題はタイミングだ。

(参考記事:「腹が減って農作業ができない」北朝鮮が陥った食糧不足の悪循環

動員令の期間は、今月5日から25日までで、例年より10日も早い。さらに各農場では、先月25日から今月5日までの間にジャガイモの種まきを終えた。

指示を聞いた両江道の人々は、農作物に霜が降りるのではという懸念を持った。しかし中央と農業委員会の命令には逆らえず、種まきを行ったところ、案の定、霜に当たってしまったというわけだ。一方、個人が耕している畑は、地域の気候に合わせて今月9日から種まきを始めたため被害は少なかった。

別の情報筋によると、トウモロコシ、ジャガイモ、大豆が大きな被害を受けた。芽がかなり出ていたところに霜が降りたからだ。トウモロコシとジャガイモは回復するが、大豆は一度霜に当たると回復は難しい。結局、再び畑を起こして、大豆を植え直すしか方法がない。情報筋は「これもすべて国のせいだ」と怒りをあらわにした。

両江道では、春先に2回、霜が降りる。5月の中旬と下旬だ。今月中旬の霜はさほどひどくなかったのだが、「前倒しして種まきせよ」という中央の命令に従ったために深刻な被害が出てしまった。前倒ししたところで収穫量が増えるわけでもない。

「科学的に農業をするという国が、そんな原理も理解できないのか」(情報筋)

(参考記事:始まる前から不作が予想される北朝鮮の麦栽培

北朝鮮の気候は大きく分けて3つに分類できる。夏は雨が多くて暑く、冬は寒くて雨、雪の少ない西海岸、一年中降水量が多く、気温の変化が相対的に激しくない東海岸、冬は極寒地で、夏も清涼な内陸部だ。

農業はその土地の状況に合わせて行わなければならないが、これを無視して、全国一斉に種まきや田植えを始めて失敗した事例は山のようにある。それでも、未だに弊害の多い中央集権型の農業システムから脱却できないようだ。

故金日成主席が謳ったチュチェ(主体)農法は、科学的なエビデンスに基づいておらず、北朝鮮の農業をダメにしてきた。金日成氏の存在を消そうとしている今、チュチェ農法も共に葬り去ることが、北朝鮮の未来のために必要ではないだろうか。

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