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「呼吸するのもつらい」ゴミ片付けの北朝鮮国民、政府に強い不満

デイリーNKジャパン / 2024年6月4日 4時1分

北朝鮮慈江道の中朝国境地帯で、ガスマスクを着用して警戒に当たる国境警備隊員(デイリーNK、2021年3月)

北朝鮮は、自分たちが外の世界からどう見られているかを非常に気にする国だ。「社会主義のイメージを乱す」との理由で露天商を取り締まったり、大通り沿いだけきれいに整備したりする。

金正恩総書記は、今年1月の最高人民会議(国会に相当)第14期第10回会議の施政演説で、地方現代化、農村文明化事業に言及したが、これをきっかけに各地域で都市や道路の整備事業が行われるようになった。だが、深刻な食糧難に苦しむ国民の受けは非常に悪い。米政府系のラジオ・フリー・アジア(RFA)が報じた。

(参考記事:ワイロ要求のネタに転落した金正恩の「反社会主義」取り締まり

両江道(リャンガンド)の情報筋によると、5月10日から全国的に「園林緑化事業」が繰り広げられ、一部地域がモデル地域に選定された。これら地域での緑化事業を5月中に終えて、全国各地に広げるというのが中央の計画だ。

道内最大都市の恵山(ヘサン)市当局は、恵山運動場から恵山駅までの区間をモデル地域に選定した。洞事務所(末端の行政機関)、人民班(町内会)は、割り当てられた区間に街路樹や芝生を植えて、花壇を造成している。作業は朝食前と週末に行われる。

作業に必要となる苗木や種は自主調達が求められる。街路樹は山から運び出すことになっているが、市内から比較的近い地域の山は、畑にされて既にはげ山となっている。そこで、住民総出で10数キロ離れたところから適当な木を運ぶ重労働をするはめになっている。それも、首都・平壌や農村での住宅建設などに多くの人が動員されたため、残された少ない人員でやらざるを得ない。

別の情報筋によると、今回モデル地域に選定された区間では、2022年11月から翌年5月までに道路拡張工事が行われたが、やっつけ工事で行われたために、美観的に良いとはとても言えない状況だ。

「蓮峯川(リョンボンチョン)の流れる恵山運動場の東側には、冬の間に捨てられた様々なゴミが溜まっていて、息をするのもつらいほどだ」(情報筋)

このゴミを片付けて、そこに芝生とひな壇の花壇を造成し、恵山駅までの区間には街路樹を植えるのが、住民に割り当てられた課題(ノルマ)だ。

住民からは強い不満の声が上がっている。

「日々の糧に事欠く状況なのに、芝生と花を植えれば自然と文明化されるのか」(住民)

また、山から木を運び出して街路樹として植え直すことについても、疑問の声が上がっている。

「植樹という名目で、毎年山から木を運び出して街路樹にしているが、むしろ山から木がなくなりつつある」(情報筋)

さらに、街路樹として植えるには初春に作業を行われなければならないが、今の時期に植え替えてもほとんどが枯れてしまうとのことだ。

今の北朝鮮は、季節的に食糧不足が深刻で、比較的豊かな平壌の近郊ですら、トウモロコシに山で取ってきた草を入れて粥にして食べたり、何も食べるものがなくて水を飲んで空腹を凌いだりする状況だ。

(参考記事:「人間の暮らしとは言えない」北朝鮮の飢餓、首都圏も深刻

ちょっとした土地があれば、野菜でも植えて少しでも食糧事情を改善させるべきなのに、金正恩氏は自意識過剰なのか、「世間体」を気にして、食べられもしない芝生や花を植えさせ、人民を苦しめているのだ。

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