北朝鮮の少年少女を蝕む「中国で捨てられたコンドーム」

北朝鮮軍の兵士（Arirang Day）

少子化による人口減少が著しいと言われている北朝鮮。しかし、その深刻さを示す統計は発表されていない。

米CIAのワールド・ファクトブックでは、2024年の推定人口を2629万8666人としているが、実際はこれより遥かに少ないとの説もある。

脱北者で韓国紙・東亜日報の記者であるチュ・ソンハ氏は、独自に入手した北朝鮮の中央統計局の内部資料に基づき、2005年の2100万人を頂点に人口が減少し始め、2015年には2060万人に過ぎないと報じている。

人口減少が国外に知れ渡ること、国力が衰退しつつあることがバレてしまうことから、北朝鮮で人口統計は極秘事項とされており、それを知ったアーカイブの責任者が妻に話したことで、一家もろとも逮捕、連行されてしまった出来事もあった。

（参考記事：金正恩の極秘情報をたまたま知った「平凡な主婦」の悲惨な運命）

北朝鮮は少子化対策として、ピル（避妊薬）やコンドームの使用などの一切の避妊を禁止している。また、妊娠中絶手術も違法だ。そんな中で、若者の間では使用期限の切れた避妊薬が闇で売買されているという。咸鏡北道（ハムギョンブクト）のデイリーNK内部情報筋が伝えた。

（参考記事：コンドーム着用はゼロ…「売春」と「薬物」で破滅する北朝鮮の女性たち）

使用期限切れのピルやコンドームの流入経路は詳らかでないが、「中国で廃棄されたものが密輸された」（情報筋）との見方が有力だ。

ピルやコンドームを買い求める主顧客層は、高級中学校（高校）の生徒など若者たちだ。情報筋はその事情を次のように語った。

「性交渉で問題が起きて妊娠した場合、（妊娠中絶）掻爬手術を受けなければならないが、その費用は50元（約1110円）以上。しかし、避妊薬を飲んだりコンドームを使えば、お金も節約できて妊娠するリスクも減らせる」

掻爬手術とは、子宮内部の胎児や胎盤を器具を使って掻き出す手術だが、女性に心身両面で負担をかけることから、世界的には世界保健機関（WHO）が推奨する吸引手術が一般的になっている。しかし北朝鮮、そして日本ではこの掻爬手術が未だに行われている。そのうえ、北朝鮮では妊娠中絶そのものが違法行為だ。問題が起きても誰にも訴えられない。

「ここ（北朝鮮）では、大人であっても婚前交渉は恥ずべきことと考えられていて、表立って言えない。ましてや高級中学校の生徒ならなおさらで、隠さなければならない。問題が起きたとしても、性交渉をしたという事実がバレることを恐れて相談に行けないのだ」（情報筋）

悪徳商人は、そんな社会的な認識を悪用する。若者に使用期限の切れたピルやコンドームを売りつけるのだ。

清津（チョンジン）市内でピルは2錠で1万北朝鮮ウォン、コンドームは1個で8000北朝鮮ウォンから1万北朝鮮ウォンで闇取引されているという。

「最近、清津市では避妊薬とコンドームが個人間で密かに取引されているが、主な購買層は高級中学校（高校）の学生や青年たちだ」と伝えた。

現在、清津では避妊薬は2錠で1万北朝鮮ウォン、コンドームは1個あたり8000～1万北朝鮮ウォンで闇取引されているという。（1万北朝鮮ウォンは約110円）

商人は、使用期限が3〜4年も過ぎたものを「何の問題もない」と売りつける。

「品物に問題があっても、学生らは文句を言いに来られないのをよく知っているからだ」（情報筋）

使用期限が切れたコンドームは、セックス中に破れるなどして、妊娠のリスクが高まる。若者は何も使わないよりはマシだと購入するが、「無駄金を使った」と後悔するしかない。

（参考記事：女子中学校も汚染…北朝鮮「薬物と性びん乱」荒れる若者たち）

「金儲けに目がくらんだ連中のせいで、若者が被害を受けている」（情報筋）