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個人事業の「規制緩和」で裏金をせしめる北朝鮮の権力者

デイリーNKジャパン / 2024年7月26日 10時37分

慈江道江界市のある美容室(画像:労働新聞)

北朝鮮では、個人が食堂や美容室などを営業する場合、市人民委員会(市役所)の商業部に利益の一部を納める代わりに、「商業管理所所属」という看板を掲げて、「なんちゃって国営商店」として営業するケースが多かった。経営者は安定的に営業ができ、行政当局は税収が得られるという仕組みだ。

だが、当局はこれの取り締まりを始めた。非社会主義、つまり社会主義にそぐわない資本主義的行為だというのだ。これは、金正恩総書記の進める「反市場政策」の一環と思われる。しかし、最高指導者から至上命題として下された命令にもかかわらず、順調には行っていないようだ。平安北道(ピョンアンブクト)のデイリーNK内部情報筋が伝えた。

(参考記事:北朝鮮、民間人経営の美容室を摘発もホンネは「カネ」

最近になって市や郡の人民委員会の商業部は、美容室などの便宜奉仕網、レストランなどの社会給養網に籍を置き、個人ビジネスを行うことを承認する例が増えている。

2022年11月の便宜奉仕法の改正、同年12月の社会給養法の制定直後は、個人による美容室やレストランなどの運営に対する取り締まりが強化され、自主的に閉店を求められたり、施設を没収されてたりしていた。

上述の通り、行政当局は、これらの業者から利益の一部を受け取ることで予算としていたが、取り締まりにより税収が途絶えてしまった。金正恩総書記が進める「地方発展20✕10政策」に基づく工場の建設などを求められた当局は、資金調達のために個人ビジネスに対する規制を緩和したものと思われる。

これを受けて、各地で個人が運営する美容室、飲食店、食材販売店はもちろん、酒場、運送・配達専門店、学習塾まで、さまざまな店が増えている。

また、場所代を払って固定式売台(ワゴン)を設置する人も増えている。これには500ドル(約8万600円)から1000ドル(約16万1000円)のワイロが求めらられ、移動式から固定式への改造にも100ドル(約1万6100円)から300ドル(約4万8400円)ほどかかるという。

平安北道(ピョンアンブクト)宣川(ソンチョン)郡在住の人は、郡人民委員会商業部に500ドルを納めて、美容室を運営できる営業許可証を受け取ったという。上納金は一回で終わるのではなく、個人事業主を管理・監督する商業部門の幹部に定期的にワイロを納めなければならない。

(参考記事:「商売する時間があれば働け」市場から女性労働力を奪う北朝鮮

人民委員会商業部から派遣された幹部は、新しくできた事業所を巡回し、「運営規定をきちんと守っていない」といういちゃもんをつけて、カネを巻き上げているという。例えば次のような感じだ。

「商務部員が店に来て、『パーマ液も、シャンプー、リンスも国産が一つもない。国産品でないものを使うのは問題だ』と難癖を付けられた、営業をしなければならないので、抗議もできず、彼らが求める通りにお金を払うしかない」

結局、突然の営業停止処分を受けることがないようにするためには、幹部をバックに付けるしかない。「カネもチカラもコネもない一般人民はますます生きづらくなっている」と嘆いた。

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