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「従業員に食べ物を配りたくて」良心からの行動が犯罪になる北朝鮮の現在

デイリーNKジャパン / 2024年8月4日 6時56分

北朝鮮の人々にとって最も一般的な燃料は練炭だ。安くて長持ちし、電気の供給が止まっても問題なく使えるからだ。新しいマンションに入居したのに、わざわざ燃料で練炭が使えるように改造する人もいるほどだ。

そもそもガスを使えるのはごく一部の特権層だけで、それとて自由に使えるわけではない。輸入状況によっては配給されないこともある。

(参考記事:ガスが止まり七輪を求めて駆けずり回る平壌の富裕層

庶民にとっては憧れのガスを、カネを受け取って横流ししていた供給所の職員が摘発された。平壌のデイリーNK内部情報筋が伝えた。

平壌市兄弟山(ヒョンジェサン)区域のガス供給所で勤務していた40代男性のA氏は、勤め先からガスを盗み出し、ボンベに詰めて個人宅に配達したり、市場のガス商人に売り払ったりしていた容疑で、反社会主義・非社会主義連合指揮部のグルパ(取り締まり班)に先月末、逮捕された。

平壌市当局は、ロシアから大量のプロパンガスを輸入し、今年4月までは例年より多くの量のガスを供給していた。これを受けて、市場でガスを扱う商人が増え始めたが、連合指揮部は、横流しが起きているのではないかとこのような現象に注目した。

そして、市場を巡り、「ガスあります」との広告を持って回っている商人を逮捕し、ガスの出どころを追及した。すると、捜査線上に浮上したのが、A氏だったというわけだ。連合指揮部は、A氏個人の犯行ではないと見てさらに追及したところ、供給所ぐるみの犯行であることが明らかになった。

「ガス供給所の幹部たちは、供給された住民向けのガスを横流しし、得た利益で、従業員に配給するトウモロコシを購入したり、私腹を肥やしたりしていた」(情報筋)

つまり、従業員の福利厚生の予算が得られないため、その確保のために、不正行為を行ったということだ。保身のためなのか、従業員思いだったのか、その意図はわからないが、幹部や関係者全員が安全部(警察署)に逮捕された。

金正恩総書記が、平壌市民への配慮として配給したガスを横流ししただけだけあって、重罰が予想される。

(参考記事:「庶民の味方」逮捕で金正恩への怒り爆発

連合指揮部は、平壌市内の他の区域の市場でも「ガス売ります」の広告が目につくことから、市内のすべてのガス供給所に対する検閲(監査)を今月末までに実施し、その後に徹底した捜査を行うと予告した。

「もしかしたら処罰されるかも知れない」(情報筋)

全市のガス供給所の職員、幹部は、捜査の手が及ぶのではないかと震え上がっているという。

勤め先の企業所や機関から製品や設備を盗んで売り払う行為は、1990年代後半の大飢饉「苦難の行軍」のころから行われるようになった。配給が止まり、現金がなければ食べ物が買えない状況で、なんとかして生き残るためだった。

このような行為は常態化し、末端の従業員から企業の幹部、市場の商人、地方政府や党の幹部までグルになって行っていた。

金正恩氏は、このような構造にメスを入れ、1980年代以前のように、国がすべての配給を司る体制に戻そうとしているが、今回の取り締まりはその一環と思われる。ただ、過去30年以上続いてきたものをそう簡単に崩すことはできないだろう。

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