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「社会主義にそぐわない」とオートバイ没収しカネを巻き上げる北朝鮮警察

デイリーNKジャパン / 2024年9月15日 18時40分

中国産バイクで鴨緑江沿いを疾走する北朝鮮の男性/2007年撮影:デイリーNK

北朝鮮では、車両の個人所有が禁じられている。すべての生産手段は国に属すると決められているが、自動車やオートバイもこれに含まれるからだ。しかし、これらはすべて「建前」に過ぎない。

免許取得、車両の購入、国の機関や国営企業の名義貸しに至るまですべてワイロさえ払えば可能だ。つまり、実際は個人所有だが、機関や国営企業所属ということにしておくということだ。

そうやって手に入れた車両で、人を乗せたり荷物を運んだりする。かなりの儲けになるため、多くの男性にとってあこがれの職業だ。

(参考記事:北朝鮮のオヤジは「タクシー運転手」が夢の職業

あくまでも違法であることから、国は時々、取り締まりを実施する。咸鏡北道(ハムギョンブクト)安全局(県警本部)は、個人所有のオートバイに対する取り締まりを行うと通告したが、その意図を巡り、オーナーから疑惑の目が注がれている。現地のデイリーNK内部情報筋が伝えた。

咸鏡北道安全局は先月末、個人所有のオートバイに対する統制に関する方針が社会安全省(警察庁)から下されたとして、今年下半期までにすべてのオートバイの登録手続き、利用実態を厳守せよとの方針を下した。そして、道内の市・郡の安全部(警察署)を通じて、個人所有のオートバイの取り締まりに関する通達を下した。

具体的にはワイロを使って取得した免許、期限を過ぎたままの免許の所有など、オートバイに関する違法行為に対して取り締まりを強化するというものだ。指示に従わない場合には、オートバイを没収して国庫に収めると警告した。

しかし、オーナーたちは何かがおかしいと思ったのだろう。咸鏡北道以外の地域に住む知人に電話をかけて尋ねてみた。すると、取り締まりは行われていないという。咸鏡北道安全局は「社会安全省からの通達があった」ことを取り締まりの理由にしているが、実は咸鏡北道独自で行っていることだったのだ。つまり、社会安全省の通達などなかったということだろう。

指示に従わない場合にはオートバイを没収すると脅かして、ワイロを徴収する行為が横行しているが、そんな高価なものを奪われてはたまらない。

「オートバイの登録には、オートバイの購入価格に相当するカネを支払わなければならず、オートバイを購入するだけで登録していない人の方が多い。それで取り締まりに引っかかると大損をする」(情報筋)

(参考記事:北朝鮮が自動車の「個人所有」に対する摘発を強化

人々は、取り締まりの動きには非常に敏感であり、それで他の地域の知人に電話をかけて確認したわけだが、咸鏡北道安全局は、何らかの事情でカネをかき集めなければならず、それで取り締まりを行っているであろうことがわかったという流れだ。当然、オーナーの間では不満の声が上がっている。

それに対して安全局は、こんな理由を掲げて、取り締まりを正当化している。

「オートバイの個人所有は、格差の象徴であり、社会主義生活様式にそぐわない」
「排気ガスによる大気汚染を招く」

これらは当然のことながら嘘っぱちで、目的はカネにあるのだろう。ワイロの方がよっぽど社会主義にそぐわないと思うのだが。

取り締まりに対してオーナーがいかなる対策を取っているかについて、情報筋は言及してない。しかし、「上に政策あれば下に対策あり」というお国柄の北朝鮮では、オーナーが大人しく取り締まりに応じるわけがないことは容易に想像がつく。

オートバイをどこかに隠してしまったり、お偉方とコネがあるのなら預かってもらう方法がある。今後の営業を考えて昵懇にしている安全員(警察官)にワイロを渡して見逃してもらう者もいるだろう。

いずれにせよ、安全局に言われるがままに、オートバイを差し出すのなら、そもそも北朝鮮という国で商売をするには向いていない。

かくして、当局がいくら取り締まりを繰り返しても、個人所有の車両はなくならない。

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