北朝鮮の女囚を追いつめた「陸の孤島」での鬼畜行為
デイリーNKジャパン / 2024年10月3日 5時1分
北朝鮮北部の両江道(リャンガンド)大紅湍(テホンダン)で先月、性暴力被害に遭った女性が自ら命を絶とうとする事件が起きた。幸いにして一命は取り留めたが、社会的に波紋が広がっている。デイリーNKの内部情報筋が伝えた。
この大紅湍はジャガイモの名産地として有名だ。だが、それ以外には何もなく、まさに「陸の孤島」だ。住民は出口の見えない貧困に苦しめられており、唯一の望みが国境の向こうの中国だ。
豆満江の対岸に点在する、中国の農村との間で小規模な密輸が行われ、それで糊口をしのいでいた人もいたが、コロナ禍で国境警備が強化された。Aさんはそんな中で摘発され、教化所(刑務所)に収監されていたが、そこは地獄そのものだった。
Aさんは先月21日、自宅で自ら命を絶とうとした。だが、すぐに発見され病院に搬送された。現在は隔離病室で治療を受けており、幸いにして命には別状がないとのことだ。
彼女の自宅には30ページにも及ぶ長文の遺書が残されていた。そこには、教化所での地獄の数年間が綴られていた。以下、一部を抜粋する。
(参考記事:北朝鮮女性を苦しめる「マダラス」と呼ばれる性上納行為)
「教化所への入所から出所直前まで、少しでも若くてきれいな女性は保安課長と保安課指導員に毎回呼び出され、性奴隷にされていた」
遺書には、加害者の実名、職責、そして具体的にどのような性加害行為を行ったのかについて詳細に記されていた。それだけではなく、他の女性受刑者が看守の性暴力加害について暴露したが、教化所側は上部に事実を捻じ曲げて報告し、この女性を独房に閉じ込めたという話など、告発を封じ込めようとする動きについても綴られていた。
「彼女は服役中、自分だけではなく複数の女性受刑者が、性奴隷扱いされたと(遺書で)暴露したが、地域の閉鎖性も手伝って、教化所の中にいるときには告発する方法がなく、出所の日を指折り数えていた」(情報筋)
そして、ついにその日がやって来た。出所した彼女は、友人たちに教化所で遭った性暴力被害について打ち明けた。しかし、返ってきたのは「残念だけど、あなたが我慢するしかない」「どうしようもない」という答えだった。
「性暴力被害は女性の落ち度」とする北朝鮮の風潮を考えると、むしろAさんに問題があったかのような噂が広がることを、友人たちは心配したのだろう。だが、それに絶望したAさんは、自分の命と引き換えに、告発を行おうとしたのだ。
(参考記事:社会の認識不足で死に追いやられた北朝鮮の「未婚の母」)
この話は地域社会に広がり、衝撃を持って受け止められた。経緯は不明だが、世論はAさんの味方に付いたのだ。そして、教化所を管理する社会安全省(警察庁)に対する批判が高まった。
これに狼狽えた社会安全省教化局保安課は、被害者が多数いるものと見て、人員を緊急に派遣して調査に取り掛かった。社会安全省は現在、教化所の保安課と教化課に命じて、この女性が収監されていた区域を受け持つ男性の看守全員に対する調査を行わせている。
なお、遺書で実名が挙げられた加害者は、既に全員が別の教化所に異動となった。これに対して、教化所側が事件をもみ消そうと、慌てて異動させたのではないかという批判が起きている。
この話を伝えた情報筋も、事件の解決には懐疑的だ。
「教化所は社会と隔離された場所で、どんなことが起こっているのかは外からでは中々わからない。社会安全省も事件をもみ消そうするだろうし、加害者も処罰されるかどうかは不透明だ」
悩みのある人の相談先
・こころの健康相談統一ダイヤル
0570-064-556
・よりそいホットライン
0120-279-338(フリーダイヤル・無料)
・いのちの電話
0570-783-556(ナビダイヤル、IP電話からは03-6634-2556)
0120-783-556(フリーダイヤル、IP電話からは03-6634-7830)
外部リンク
この記事に関連するニュース
-
「外部から見られる」中朝国境近くの北朝鮮刑務所で改修工事
デイリーNKジャパン / 2024年9月26日 6時51分
-
「女子高生の肝臓を食べた」猟奇事件を助長する“全体主義”の歪んだ内幕
デイリーNKジャパン / 2024年9月22日 12時25分
-
乗務員を殴った乗客を乗せたままフライト強行、韓国アシアナ航空の対応に批判殺到「他の乗客の安全は無視?」
Record China / 2024年9月12日 14時0分
-
「もう我慢できない」被災地での”性上納”に北朝鮮女性の怒りが爆発
デイリーNKジャパン / 2024年9月7日 16時1分
-
BLACKPINK、TWICE、NewJeansだけではなかった 韓国ディープフェイク性被害は中学生や女性兵士にまで
ニューズウィーク日本版 / 2024年9月5日 14時30分
ランキング
-
1イスラエル攻撃、米介入けん制=「緊張激化は求めず」―イラン外相
時事通信 / 2024年10月2日 18時2分
-
2【専門家解説】イランがイスラエルにミサイル攻撃 戦火拡大…その背景は? それぞれの主張は?
日テレNEWS NNN / 2024年10月2日 20時34分
-
3ロシア、9月の領空侵犯を否定 「日本の抗議拒否」と外務省主張
共同通信 / 2024年10月3日 5時15分
-
4国連総長、紛争拡大停止訴え 安保理、緊急会合を開催
共同通信 / 2024年10月2日 23時54分
-
5ロシア、米との核協議の可能性否定 「NATO拡大は安保への脅威」
ロイター / 2024年10月2日 23時27分
記事ミッション中・・・
記事にリアクションする
記事ミッション中・・・
記事にリアクションする
エラーが発生しました
ページを再読み込みして
ください