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北朝鮮国内で「偽ドル札」事件が多発…警察当局は放置

デイリーNKジャパン / 2024年10月5日 6時19分

ドル紙幣(資料写真)

北朝鮮の首都・平壌郊外の平城(ピョンソン)の駅前でタバコ屋をしているキムさんは先月23日、ある男から1カートン(10箱)7ドルのタバコが4カートン欲しいと言われた。100ドル(約1万4700円)札を受け取り、72ドル(約1万600円)をお釣りで渡した。

1日に10箱売るのも大変な中での大口購入に、キムさんはすっかり上機嫌だった。しかしその翌日、タバコを仕入れに卸商のところに行って、支払いをしようとするとこんなことを告げられた。

「これは偽札だよ」

キムさんが差し出したのは、「あの男」から昨日受け取った100ドル紙幣だった。衝撃のあまり、文字通り地団駄を踏んだ彼だったが、どこにも訴え出るところはない。

これは、現地のデイリーNK内部情報筋が伝えた偽ドル札事件の一部始終だ。全国有数の卸売市場がある平城では最近、このような偽ドル札事件が相次いでいる。市場の商人はもちろん、現金のプロである闇両替商ですら、偽札を掴まされている。

50代の偽両替商は先月20日、若い男女から100ドル札3枚を受け取り、北朝鮮ウォンと両替したが、そのうち2枚が偽札であることが後にわかった。100ドル札を見慣れているはずの人ですら騙されてしまうほどの出来具合のようだ。なお、偽札の出どころについて、情報筋は言及していない。

偽ドル札事件が相次ぐ背景には、北朝鮮ウォン安と外貨使用への取り締まり強化がある。

米ドルの闇レートは、今年5月末には1ドル(約147円)8920北朝鮮ウォンだったが、6月に入ってから暴落し、9月2日には1万6500北朝鮮ウォンと史上最安値を記録した。わずか3カ月で価値が半分近く下がってしまったのだ。

北朝鮮国内における外貨使用に対する当局の取り締まり強化が、極端なウォン安を引き起こしたものと見られている。

(参考記事:2週間で北朝鮮ウォンの価値が3分の2に…経済の混乱が加速

2009年11月の貨幣改革(デノミネーション)の失敗で、北朝鮮の人々は自国通貨を信用しなくなり、貯蓄は米ドルや中国人民元でタンス預金にするのが一般化し、日々の買い物でも外貨を使うようになった。国是として自主、自立、自衛を掲げる国が、通貨主権を奪われたも同然の状態となったのだ。

当局は、国内で流通する外貨を国庫に納め、北朝鮮ウォンを復活させるために、何度も「外貨使用禁止令」を出すも効果はあまりなく、外貨を無理やり銀行に預けさせる手法もうまく行かなかった。

今年6月からは、外貨の使用、所有に対して、改めて非常に厳しい取り締まりを始めた。それが逆に外貨の需要を高めてしまうという逆効果を生んでしまったのだ。

また、外貨でやり取りをする場合には、安全員(警察官)や糾察隊(取り締まり班)に見られて、没収されないように、素早く行う必要がある。闇両替商が米ドル紙幣を受け取り、細かく確認しようとすれば、犯人は「なぜそんなにかかるのか、もう取り引きはやめにするぞ」と急かす。また、本物と偽札を混ぜて手渡すのも、相手を安心させる手法だ。

安全部(警察署)に訴え出ても全く意味がない。

「闇両替商はもう生きていけないと嘆き、安全部に通報するが、安全部は捜査もしてくれず、『違法に外貨を手に入れようとしたから、そういう目に遭うのだ』と相手にしてくれない」

(参考記事:金正恩氏が父の大失政「貨幣改革」のマネごとをする謎

北朝鮮の人々は経済政策について、「お上が何もしないことが一番助かる」という。当局の政策は、人々が少しでも儲けてよりよい暮らしをしようとするのを、妨害するだけだからだ。

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