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韓国の脱北者団体、ゼレンスキー大統領に「対北心理戦団」としての現地入りを懇願

デイリーNKジャパン / 2024年10月31日 16時11分

金正恩氏が北朝鮮軍特殊部隊を視察した(2024年10月4日付労働新聞)

韓国に住む200人近くの脱北者が、ウクライナに向かい、「かつての同志」たちと対峙しようとしている。

朝鮮人民軍(北朝鮮軍)に7年から10年の勤務経験を持つ脱北者が、ウクライナの最前線に向かう計画を立てていると、香港の英字紙「サウス・チャイナ・モーニング・ポスト」が報じた。

まだ「脱北」という言葉がなかった1979年に北朝鮮から韓国に亡命し、世界北朝鮮研究所の所長を務めるアン・チャニル氏は、軍での勤務経験を持つ脱北者を率いて最前線に向かい、心理戦の展開を考えていると明らかにした。

「私たちは皆、北朝鮮の軍事文化と心理状態を誰よりも理解している退役軍人です」

そう述べたアン氏は、北朝鮮の軍隊組織の内部知識を活用し、ウクライナ侵攻の最前線に投入された北朝鮮兵士の心理的弱点を利用して、士気を下げることを目的としている。

ビラの散布や通訳に加え、現在、軍事境界線で行われている拡声器放送も利用する考えを示した。アン氏も朝鮮人民軍に勤務していたころに、韓国の拡声器放送やビラに触れたことで脱北した。

脱北者で与党「国民の力」のパク・チュングォン議員も、拡声器放送のノウハウをウクライナに提供することを提案した。

(参考記事:「指揮官が率いて大量離脱も」ウクライナの北朝鮮軍に心理戦の提案

脱北者で対北風船団の団長として、ビラ入りの風船を北朝鮮に飛ばす活動を行い、今回の構想の中心人物の一人であるイ・ミンボク氏は、駐韓ウクライナ大使館を通じて、ゼレンスキー大統領に公開書簡を送った。犠牲者が非常に多く、あまりに凄惨なことから「ひき肉製造機」と言われる戦場からの北朝鮮兵士の救出を訴えた。

以下はその書簡の一部だ。

「北朝鮮は(兵士たちを)傭兵として送り込んだが、われわれはボランティアとして現地に向かう」
「われわれがウクライナにいるいるだけで、(北朝鮮の兵士の士気に)大きな影響を与えるだろう」
「傭兵たちは希望と勇気を得て、自由を求めて(こちらに)やってくるだろう」

今回の計画について、シム・ジュイル牧師を中心とした北朝鮮キリスト軍人会などの脱北者団体は、「脱北者たちはウクライナ戦線に駆け寄りたい」と題する声明を出し、賛同の意思を示した。また、個人単位の賛同者も200人に達したと、韓国メディアは報じている。

しかし、韓国政府は今回の計画について反応を示していない。

一方、戦後拉北者家族連合会は10月31日午前、北朝鮮との軍事境界線に近い臨津江から、5万枚のビラを入れた風船を飛ばす予定だったが、地元の京畿道や坡州市の関係者や警察に阻止された。この日は、散布を断念したが、日時を改めて行う方針を示した。

(参考記事:「われわれではなく、確認・応答する価値なし」金与正氏、韓国へのゴミ風船で皮肉込めた談話

これに対して京畿道のキム・ソンジュン行政第一副知事は、「道民の生命と安全を守ることが最優先」として、北朝鮮を刺激する風船やビラの散布を阻止するため警察を投入すると明らかにする同時に、ビラ散布を見かけたら通報するように住民に呼びかけた。

一方、同様に北朝鮮に面している仁川市の江華(カンファ)郡は、郡全域を「危険区域」に設定し、ビラ散布を禁止する行政命令を出した。

野党の共に民主党は、ビラや風船の散布を北朝鮮を刺激すると問題視し、政府与党を激しく攻撃している。ただ、江華郡のトップであるパク・ヨンチョル郡守は与党国民の力の所属だ。

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