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「高級ダウンが飛ぶように売れる」北朝鮮のもうひとつの顔

デイリーNKジャパン / 2024年11月10日 8時10分

金正恩氏とジュエ氏が航空節に際して北朝鮮空軍司令部を訪れた(2023年12月1日付朝鮮中央通信)

中国との国境に接する北朝鮮の恵山(ヘサン)の7日の最低気温は氷点下7度、最高気温は8度。この季節としてはかなり温かい方だが、それでも充分寒い。市場では中国から密輸されたダウンジャケットが人気だ。

両江道(リャンガンド)のデイリーNK内部情報筋は、密輸で輸入されたダウンジャケットが売られていて、北朝鮮製よりも人気を集めている。ほとんどが毛皮付きのフードがついたもので、赤、白、黒など様々な色があり、サイズも子供用から大人用まで様々だ。

市場では、加工品、輸入品の販売は禁止されているはずだが、どのような経緯で販売に至ったのか、取り締まりはないのかなど、情報筋は言及していない。また、国の機関が行う「国家密輸」で取り寄せられたものか、商人が取り寄せたものなのかもわからない。

価格は250元(約5360円)から2000元(約4万2900円)と千差万別だが、食糧難に加えて米価高騰が続く北朝鮮で、このような高価なものを購入できる層は限られているだろう。実際、1000元(約2万1400円)以上のものは、幹部やトンジュ(金主、ニューリッチ)向けの高級品だ。ちなみに250元はコメ70キロ分に相当する。

これ以外にも、中国製のセーターが密輸されている。300元(約6430円)以上で売られているが、デザインもいろいろあり、素材も柔らかくて暖かいため人気があるという。

(参考記事:「脱コロナ消費」を下支えする北朝鮮労働者のブラック労働

一方で、北朝鮮製のダウンジャケットは100元(約2140円)から1000元で売られており、中国製より安いが、質もデザインも悪く、重いため、あまり売れないとのことだ。

情報筋は、衣料品業者が量を多く輸入するより、いいものを少しだけ、それも若者のトレンドに合ったものを輸入する方式に戦略を変えたと説明した。

恵山市の40代の密輸業者はこのように語った。

「今年の春と夏に安い衣類を輸入して卸売りしたが、在庫を多く抱えてしまった。今回は高価な衣類を少しだけ輸入したが、成功だった」
「大衆向けのものではなく、目新しいものを求める金持ちが多く、2000元のダウンジャケットが1週間も経たずに、一番先に完売した」

ダウンジャケットの購入層は従来の金持ちにとどまらない。若者たちは、業者も知らないブランド名を出して、デザインや素材などを事細かくチェックして購入するとのことだ。市場への締めつけが強まり、多くの人が現金収入を失い、貧困に苦しむ中で、いかにして収入を得たのか。中国に輸出されるつけまつげやウィッグだ。

「若者のほとんどがつけまつげやウィッグなどを作って稼いだお金を貯めて服を買う」

昨年まではあまり服を買おうとしなかった彼らだが、今年に入ってから購買意欲が高まっているとのことだ。

(参考記事:「かつら内職ブーム」でようやく餓死を逃れた北朝鮮国民

情報筋は、冬服市場の売れ行きについて「コロナ以降で、初めて高価で良い商品が市場に出回った」と評価している。つまり、収入の両極化が進んでいるということだろう。

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