1. トップ
  2. 新着ニュース
  3. 国際
  4. アジア

「ドングリを供出せよ」北朝鮮の核開発基地で緊急命令

デイリーNKジャパン / 2024年12月5日 14時19分

14日に撮影された北朝鮮・寧辺のウラン濃縮施設の衛星写真。破線で囲まれたところが拡張部とみられる。(1)ウラン濃縮施設(2)既存の施設(3)アクセス部分(4)新たな外壁(マクサー・テクノロジーズ/ミドルベリー国際大学院モントレー校提供、共同)

北朝鮮の寧辺(ニョンビョン)と言えば、核施設があることで世界的に知られている。

北朝鮮と韓国、そして米朝間の対話が進んだ2018年12月上旬から稼働している兆候はなかったが、その後の2019年2月のベトナム・ハノイでの米朝首脳会談が決裂し、2021年7月から再稼働に入ったようだと、国際原子力機関(IAEA)は報告書で述べている。

核兵器用のプルトニウムの供給源となっていると見られているが、今回の話は、核とは全く関係のない拍子抜けするような話だ。平安北道(ピョンアンブクト)のデイリーNK内部情報筋が伝えた。

寧辺郡人民委員会(郡庁)は先月20日、地域住民に対して、物資の供出を命じる緊急指示を出した。ウランをかき集めろというものでもなければ、核施設の拡充に必要な鉄筋を作るために鍋釜を差し出せというものでもない。

「ドングリの実を3キロ納めよ」

ドングリが核開発に役立つわけではない。

北朝鮮は、「民族最大の名節」と呼ぶ最高指導者の生誕記念日に、全国の子どもたちにお菓子セットを配布する。たかがお菓子と言うなかれ。その質の良し悪しで金正恩氏の評価が左右されるほどのものなのだ。

(参考記事:「金正恩印」のお菓子作りに失敗した5人の悲惨な運命

年明け早々の1月8日に、金正恩総書記の生誕記念日が待ち構えている。それも、祖父・金日成主席の生誕記念日「太陽節」、父・金正日総書記の生誕記念日「光明星節」を格下げして、自らの生誕記念日を押し出す初回にあたる2025年のその日の動向は非常に注目されている。

その日を前にして、金正恩氏の名前で配布されるお菓子が粗末なものであれば、金正恩氏の「独り立ち」に水を掛ける結果になりかねない。それだけあって、中央からは何らかの指示が出ているのだろう。

生後3カ月以上12歳の子どもがいる家族には、子ども1人あたり大豆300グラムと卵5個を合わせて供出せよとの命令も下された。

しかし、「ドングリ供出令」に地域住民は、反旗を翻した。

「市場では、ドングリの実1キロがトウモロコシ1キロとほぼ同じである1キロ4000北朝鮮ウォン(約28円)で売られている。ドングリの実3キロを買うカネがあれば、3日間の食糧が買える。日々の暮らしもやっとなのに、3日間の食糧分を出せるものか」

ついに「プレゼントは要らないから、供出には応じない」という人が現れてしまった。人民班長(町内会長)は、町内の家々を周り、受け取る意思があるかどうかを尋ねている。つまり、郡当局は「受け取らないから出さない」という選択を認めたということになる。繰り返される金品の供出に対して、住民の不満がいかに強いかを示した形だ。

(参考記事:庶民を「ドングリ地獄」に突き落とす金正恩の経済政策

情報筋は説明した。

「プレゼントを用意したり、住民に供給する基礎食品(醤油や味噌)を製造するからと住民に対して経済課題(金品供出のノルマ)を課すと、不満が強まることをイルクン(幹部)もよく知っているようだ」
「それで最近は、課題をこなせと脅迫したりはしない空気になっている」

ただ、これはあくまでも大人向けの食品に限った措置だ。子どものいる家庭に対するドングリの実、大豆、卵の供出命令は撤回されていない。住民の不満は非常に強い。

「去年は卵は2つでよかったのに、今年からは急に5つになった。その理由がわからない。不味くてレンガのように固いお菓子になぜそんなに多くの卵が必要なのか」

つまり、郡の上層部が集めた卵を横流ししている可能性を疑っているということだ。北朝鮮の核開発の中心地が、こんなことで揺れているのだ。

この記事に関連するニュース

トピックスRSS

ランキング

記事ミッション中・・・

10秒滞在

記事にリアクションする

記事ミッション中・・・

10秒滞在

記事にリアクションする

デイリー: 参加する
ウィークリー: 参加する
マンスリー: 参加する
10秒滞在

記事にリアクションする

次の記事を探す

エラーが発生しました

ページを再読み込みして
ください