女囚が群がる北朝鮮刑務所「特別部屋」の隠微な実態
デイリーNKジャパン / 2024年12月7日 12時39分
北朝鮮当局が国民に対し、「犯罪をおかした者は自首すれば善処する」と呼びかけていると、米政府系のラジオ・フリー・アジア(RFA)が報じている。
咸鏡北道(ハムギョンブクト)のある住民はRFAに対し、「最近、当局が住民に犯罪事実について自首することを求めている」とし、「犯罪が発覚し、調査を受ける前にあらかじめ自首すれば許してくれるということだ」と伝えた。
しかし、これに積極的に応じようとする者はいないという。それもそうだろう。過去に同じような勧告を受けて自首し、ひどい目にあった事例は枚挙に暇がない。
そもそも北朝鮮当局の言う「自首」は、共犯者について洗いざらい明かすことが条件として含まれる。家族や友人を売り渡し、その後の人生を無難に過ごせるはずもない。
仮にこの条件に応じなければ、教化所(刑務所)送りとなる。環境が劣悪で、人権侵害が横行する北朝鮮の刑務所で生き延びるのは至難の業だ。
(参考記事:若い女性を「ニオイ拷問」で死なせる北朝鮮刑務所の実態)
それでも、方法がないわけではない。RFAによると、平安南道(ピョンアンナムド)のの甑山(チュンサン)教化所は昨年、管理当局の検閲を受けた。その対象となったのは、独房ならぬ「特房」、つまりはスペシャルルームである。
韓国に住む親戚からの送金を受け取った容疑で逮捕され、実刑判決を受けてこの教化所に収監されたRFAの情報筋は、特房について次のように語った。
「教化所を管理する教化局の高官に年間500ドル(約6万7000円)を渡せば、高官が教化所の幹部に電話をかけてくれる。高官とコネがなければ、受刑者を管理する教化所の幹部に毎月100ドル(約1万3000円)を渡せば特房に入れてもらえる」
情報筋は、特房には女性ばかり20人は入っていたと聞いたと述べた。しかし検閲により、ワイロを受け取って特房を提供していた平安南道教化局幹部2人と、甑山教化所の所長が撤職(解職)されたという。
また、この教化所で5年間受刑したという別の情報筋の証言では、特房に入ると、家族の面会や外部との通信で特別待遇が受けられるという。しかしそれにしても、年間に500ドル、毎月100ドルとは同国では恐ろしく高額だ。ワイロのやり取りには、金銭以外の「方便」が用いられていたのだろう。
(参考記事:北朝鮮女性を苦しめる「マダラス」と呼ばれる性上納行為)
もっとも、生き延びるためには「安い、高い」とは言っていられない。社会主義を標榜する北朝鮮の刑務所は、人の命の値段が金銭で決められる、資本主義も真っ青の空間であるようだ。
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