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金正恩は韓国大統領の「戒厳失敗」を残念がっている

デイリーNKジャパン / 2024年12月7日 4時32分

金正恩氏が平安北道の水害現場を視察した(2024年7月29日付労働新聞)

韓国で発生した「非常戒厳」事態について、北朝鮮は7日朝まで沈黙を守っている。その最大の理由は、北朝鮮にとってすら予想外の出来事だったためだろう。

しかし、尹錫悦大統領が「非常戒厳」宣布の目的として「従北反国家勢力の剔抉(てっけつ)」を掲げていただけに、北朝鮮と無関係に繰り広げられたものではない。尹大統領の失敗を見て「ざまあ見やがれ」のひとことくらい言うのがむしろ自然な状況だ。

それにもかかわらず沈黙しているのには、いくつか別の理由も考えられる。

第一に、国家の最高指導者による強権発動を、民主的な政治で選ばれた国会議員たち、そして一般市民らが食い止めたという事実は、金正恩独裁体制にとって面白いものではない。北朝鮮当局は、自国民の韓国への系統を抑え込むべく、韓流狩りに血道を上げている。

そんな中、韓国社会の民主的な現実が自国内に伝われば、国民の外部世界への憧れはいっそう強まりかねない。

もちろん、北朝鮮メディアが、戒厳を食い止めた韓国社会の動きを詳しく報じることはない。当局の情報統制により、北朝鮮国民の多くは当面の間、この動きについて何も知らないまま過ごすだろう。

(参考記事:北朝鮮女性を追いつめる「太さ7センチ」の残虐行為

しかし、北朝鮮当局の情報統制は、穴が開いて久しい。いくら取り締まっても韓流コンテンツの密輸・密売のなくならない実態がそれを物語っている。

第二に、金正恩総書記は今回の戒厳失敗を、むしろ残念がっている可能性が高い。

金正恩氏としては、韓国の混乱が長期化し、相対的な国力低下につながった方が利益は大きいからだ。仮に戒厳令が成功裏に布かれても、北朝鮮にとって損失はない。市民や一般兵士の間で政府への反感が強まれば、それだけで韓国の軍事力は低下する。

また、尹大統領が韓国内にいる「従北反国家勢力」の一掃を目指しても、言論の自由がある社会で、そういった傾向を持つ人々を本当に根絶やしにするのは不可能だ。

いずれにせよ、北朝鮮との対決よりは対話を掲げる進歩系野党が次の韓国政権を担う可能性が高い現状は、金正恩氏にとって有利に働くだろう。それでじゅうぶんに時間を稼ぎ、その間にロシアとの連携を深めながら、自国の力を強化することができるからだ。

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