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報復殺人や騒乱事件を誘発…「不良警官」の暴走に悩む北朝鮮

デイリーNKジャパン / 2025年1月5日 5時36分

平壌のサッカースタジアムで保安員(警察官)と揉める北朝鮮の男性。周りの人々は指を指して保安員を非難している(NEWSIS)。

北朝鮮で安全員(警察官)は相当の嫌われ者だ。強い者には媚びへつらい、弱いものには横暴の限りを尽くす。北朝鮮で最も弱い立場にあるイナゴ商人(露天商)に対しては、取り締まりと称して暴力をふるい、暴言を吐き、品物を奪って、ワイロを搾り取る。

流石に不味いと思ったのか、社会安全省(警察庁)は、全国の安全部(警察署)に対して、横暴な振る舞いをやめるように指示を下した。咸鏡北道(ハムギョンブクト)のデイリーNK内部情報筋が伝えた。

(参考記事:北朝鮮女性を追いつめる「太さ7センチ」の残虐行為

会寧(フェリョン)市安全部は先月8日、所属する安全員に対して、「道徳と品性」を持つよう強調し、非社会主義的な行動(風紀の乱れ)の取り締まりにおいて、強圧的な行動を根絶せよとの指示を下した。これは、次のような社会安全省の指示に基づくものだ。

「すべての安全員は高邁な道徳的品性をもとにして社会秩序を確立し、人民の生命と財産を保護する役割を担うべきだ」

情報筋によると、かつての安全員は今ほど暴力的ではなかったようで、最近になってひどくなった。道端の食べ物を売る露天商に対して、違法な商行為だといちゃもんをつけて、ワイロを要求したり、暴言を吐いたり、暴力を振るったりするようになった。これは、警察学校でそう教えられているからに他ならない。

(参考記事:「日本の統治下より酷い」北朝鮮警察学校の”悪の教典”

しかし、酒に酔って暴力を振るうなど、そのやり方が度を越しており、露天商からは不満の声が相次いで上がっている。

「ただでさえ商売もうまくいかないのに、安全員がしつこく取り締まりをするから、本当に頭にくる」(商人)

露天商もやられてばかりいるわけではない。安全員に激しく抗議し、騒乱状態になる事例も報告されている。2015年6月、道内の茂山(ムサン)では、市場の商人と安全員(当時は保安員)が、販売が禁じられている工場正規品の食料品の押収を巡り双方が衝突、数十人の死傷者が発生する事件が起きた。

(参考記事:「生きていけない。ドカンと暴れろ」北朝鮮で騒乱、死傷者数十人

また、安全員が報復殺人の被害者となる事件も各地で起きている。

(参考記事:「報復殺人」で警察官70人死亡…秩序崩壊に向かう北朝鮮社会

これに対して、現場の安全員からは不満の声が上がっている。

「違法な活動を取り締まり秩序を確立することは自分たちの任務で、それは実績となる」
「実績がなければ、総和(総括)で批判され、ひどい場合は1年中批判され続ける。だから、強行な態度で露天商を取り締まらなければならない」(安全員)

また、商人に罰金を支払うよう言い渡しても、大人しく応じる者はほとんどいないため、強圧的に取り締まらざるを得ず、ワイロについても「こちらから要求しているのではなく、見逃して欲しいと向こうから差し出してくる」とも述べた。

上層部は安全員への監視を強化しているが、実績を出せとプレッシャーをかけられている安全員が、露天商に対する態度をあっさりと変えることはないだろうと、情報筋は述べた。

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