北朝鮮の17歳「革命化失敗」で実質死刑、家族も全滅
デイリーNKジャパン / 2025年1月3日 5時8分
首都・平壌の北東部に位置する恩情(ウンジョン)区域は、北朝鮮最高の科学研究の殿堂「国家科学院」やミサイル技術者らが住むタワマン団地「衛星科学者通り」を擁する新興住宅地だ。隣接する商業都市、平城(ピョンソン)市から1995年に平壌市に編入された。
そこに住む18歳の若者が、15年もの実刑判決を受けた。容疑は「友人に韓流ドラマなどのファイルを売った」というものだが、「犯行」当時は17歳の未成年だったにもかかわらずだ。現地のデイリーNK内部情報筋が伝えた。
この若者は、朝鮮中央銀行平壌市恩情支店内にある朝鮮労働党委員会の初級党書記の息子のAさんだ。
Aさんは中国から持ち込まれた韓国ドラマやK-POPの動画ファイルを集め、USBメモリやSDカードに保存し、同級生や地域住民に密かに販売していた。歩いていけるほど近い平城の中心部には、全国から様々な物資が集まる巨大な市場がある。そこには、ご禁制の品である韓ドラ、K-POPのファイルもあり、入手しやすい状況だったのだろう。
だが、それを買った同級生が、どういうわけか安全部(警察署)に自首してしまったのだ。
「反韓流三法」の一つの反動思想文化排撃法違反で逮捕されたAさんは、6カ月にわたり勾留され取り調べを受けた。拷問を受けたことは想像に難くない。
(参考記事:北朝鮮女性を追いつめる「太さ7センチ」の残虐行為)
そして12月10日、彼に対する公開思想闘争と公開裁判が開かれた。その場には両親、クラスメート、保護者、そして恩情区域の人民班長(町内会長)が集められた。
安全部は、彼の罪状を「資本主義思想文化を流布して、社会主義体制の根幹を揺るがした」とし、「(販売したソフトには)資本主義文化を美化する内容と共に、奢侈と享楽を助長する歌が含まれていた」と問題視した。
そして彼の父の部下、地域住民、複数の若者が、彼から買ったファイルを所持し、コピーしていたことも暴露された。いずれも「資本主義思想を警戒できなかった責任」として自己批判を迫られ、この場の空気はさらに重いものとなった。
彼の父は「家庭革命化の失敗」――つまりしつけがなっていなかったと謝罪し、さらにはその上司も、許しを請う発言をした。
北朝鮮で政治犯には連座制が適用されるため、本人が教化所(刑務所)または管理所(政治犯収容所)送りになるだけでは済まされず、その家族や関係者も重い処罰を受けることになる。それだけは勘弁して欲しいと頭を下げたということだ。
(参考記事:若い女性を「ニオイ拷問」で死なせる北朝鮮刑務所の実態)
彼は公民権を持つ18歳で、「犯行」当時は17歳だったが、未成年の処罰は軽くするという原則が適用されず、15年の労働教化刑(懲役刑)の判決が下された。環境の劣悪な北朝鮮の刑務所で15年を生き延びるのは至難の業で、実質的な死刑判決と変わらない。
また、父親は初級党書記を解任された。
両親の処分は決まっていないが、息子ともども教化所や管理所行きとなるならば、永遠に再会できない可能性もある。罪とも言えないような息子の「罪」で、一家を崩壊に追い込まれるのだ。
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