「妹じゃなきゃ処刑だ」金与正氏、ナンバー2の権勢に陰り
デイリーNKジャパン / 2025年1月18日 5時4分
北朝鮮・平安北道(ピョンアンブクト)のデイリーNK内部情報筋によると、当局は、昨年末に開催された朝鮮労働党中央委員会第8期第11回総会拡大会議の結果に基づき、各地の行政機関や国営企業に対し、ノルマ達成に向け当面の間、「経済扇動」を行うよう指示した。
経済扇動とは、生産現場に「集中経済扇動隊」を動員し、労働者の意欲を高める取り組みだが、ハッキリ言って逆効果しか生まない。扇動隊は、スピーカーを積んだワゴン車の前でアコーディオンを演奏し、旗を振り、歌を歌い、けたたましく演説をする女性らの一団で、労働者たちからの評判は「イライラする」「耳から血が出そうだ」と散々なものだ。
それにもかかわらず、扇動隊は北朝鮮で存在感を増している。トップに君臨しているのが金正恩総書記の妹である金与正(キム・ヨジョン)党副部長だからだ。扇動隊には今や、「金与正軍団」の別名まであるほどだ。
(参考記事:金与正を批判し相次ぎ失踪「家族ごと一夜にして消えた」)
その振舞は、庶民から反感を買っている。現地情報筋によると、扇動隊は「全党と全社会の金正恩思想一色化」というスローガンを掲げ、表向きは思想宣伝を行っているが、実際は規模を増やすことにばかり熱心で、特別待遇を受けている。
代表的なのが、月給と食糧だ。
慢性的な経済難の中にある北朝鮮の職場では、給料をまともに受け取れないのが当たり前なのに、金与正軍団にはきちんと支払われている。また、国営米屋である糧穀販売所では、庶民は一度に10日分の穀物しか買えないことになっているが、金与正軍団のメンバーには「特別入荷」分が割り当てられていると言った具合だ。
こうした利権体質に対して庶民の間では「金正恩氏の妹ではない他の幹部があんな組織を立ち上げれば、反逆者扱いされ、処刑されてもおかしくない」との声も上がるほどだ。
(参考記事:北朝鮮の15歳少女「見せしめ強制体験」の生々しい場面)
一方、兄に次ぐ国内ナンバー2の権力者と見られてきた金与正氏だが、そのポジションに対する専門家の評価はわかれている。
平壌で元日に行われた「新年慶祝公演」のテレビ放送では、金与正氏が小学校低学年と思しき女児と、就学前と思しき男児を連れてメーデースタジアムに入場するシーンが登場し、「彼女の子どもたちではないか」と注目を集めた。韓国の情報機関・国家情報院は、「把握した金与正氏の出産推定時期や登場した子どもの年代を勘案し、(実子であることが)事実である可能性を含めて精密な分析を行っている」としている。
しかし、名前が「ジュエ」とされる金正恩氏の娘が、父と並んでVIP席に座り、公演を鑑賞していたのに対し、金与正氏の子どもたちと思しき女児と男児の姿はその近くになかった。これを受け、彼女もその子どもたちも、所詮は金王朝の「枝」にすぎないとの見方が強まったのだ。
もっとも、前述したような金与正軍団の横暴は、やはり彼女が金王朝の一員であることから可能になっているものだろう。金正恩氏の娘が権力の後継者となるまでには、早くともあと十年以上はかかると見られる。その間に、金正恩氏の身に不測の事態があれば、妹が「中継ぎ」として登板する可能性もある。
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