1. トップ
  2. 新着ニュース
  3. 国際
  4. アジア

少なくとも100人死亡…金正恩命令の「速度戦」で死屍累々

デイリーNKジャパン / 2025年1月26日 5時10分

金正恩氏が北朝鮮軍特殊部隊を視察した(2024年10月4日付労働新聞)

水害ですべてを失った被災者に与えられた住宅は、血にまみれていた。

北朝鮮と中国の国境を流れる鴨緑江が大雨で氾濫したのは昨年7月のことだ。北朝鮮公式発表でも死者は1500人に達し、1万5000人が家を失った。実際の死者や被災者の数はこれを遥かに上回るものと見られている。

(参考記事:「死者1100人以上」北朝鮮の救難ヘリが相次ぎ墜落、全員死亡も

金正恩総書記は、昨年のうちに被災者向けの住宅建設を完了させるように厳命した。各地から人がかき集められ、工事が進められたが、その過程で多くの人命が失われたことが明らかになった。両江道(リャンガンド)のデイリーNK内部情報筋が伝えた。

内閣は年明けに各道の人民委員会(道庁)に、洪水被害復旧作業において人命被害を出さないようにせよとの指示文を伝達した。その中で、各道で集計した労災事故死亡者数を明らかにした。

(参考記事:金正恩氏、日本を超えるタワーマンション建設…でもトイレ最悪で死者続出

平安北道(ピョンアンブクト)で50人、慈江道(チャガンド)で30人、両江道で20人が作業中の事故で死亡した。情報筋は「多くの人が亡くなったが、復旧作業に動員された軍人で亡くなった人の数は集計に含まれていない」と指摘した。

被災地の復旧作業には、朝鮮労働党、朝鮮職業総同盟(職盟)、朝鮮社会主義女性同盟(女盟)、社会主義愛国青年同盟(青年同盟)に加え、各機関、企業所の突撃隊(半強制の建設ボランティア)が参加した。さらに朝鮮人民軍(北朝鮮軍)の兵士も動員された。

指示文は、死亡事故の原因について「不注意」だとしている。これは、ほとんどの場合が虚偽報告だ。

正直に責任を認めれば関係者の重罰は避けられない。また、連座制でどこまで累が及ぶかわからない。「死人に口なし」で亡くなった人をなすりつけておけば、生きている人が助かるという北朝鮮なりの「人を生かす」方法なのだ。

(参考記事:「手足が散乱」の修羅場で金正恩氏が驚きの行動…北朝鮮「マンション崩壊」事故

指示文は今後、死者を出した場合、責任者に対する処罰も定めている。

死者が1〜2人なら厳重警告、3〜4人なら無報酬労働(強制労働)の処罰、5人以上なら労働教養、つまり刑務所行きとなる。それよりひどい場合は解任、撤職(更迭)した上で処罰を下すと言う。

「毎年全国的に行われている建設事業で事故が徐々に増えつつあり、死者数が減っていないとして、人命被害を最少化する方向でこれ(処罰)が最善の方法だと(内閣は)強調した」(情報筋)

この指示文は、両江道の各市・郡の機関、企業所にも配布されたが、受け取ったイルクン(幹部)はこのような怒りを示した。

「水害被害の復旧で新しい家に入居した人びとは万歳を叫んでいるが、その裏で住宅と堤防工事で多くの人が死んでいる」(情報筋)

労災死者数が減らない理由の一つは、「速度戦」だ。決められた工期までに否が応でも間に合わせるために手抜き工事や安全規則を無視した工事が強行される。その結果、多数の死者を出す大惨事が幾度となく繰り返されている。

(参考記事:北朝鮮、橋崩壊で「500人死亡」現場の地獄絵図

また、ヘルメットなどの安全装備の不備も問題だ。この2つの問題を解決するだけでも、死者数は大きく減るだろうが、北朝鮮の内閣は重罰という従来の発想から抜け出せずにいる。

この記事に関連するニュース

トピックスRSS

ランキング

記事ミッション中・・・

10秒滞在

記事にリアクションする

記事ミッション中・・・

10秒滞在

記事にリアクションする

デイリー: 参加する
ウィークリー: 参加する
マンスリー: 参加する
10秒滞在

記事にリアクションする

次の記事を探す

エラーが発生しました

ページを再読み込みして
ください