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人糞積んだリアカーをひっくり返し大立ち回り…「汚い戦争」が頻発する北朝鮮

デイリーNKジャパン / 2025年1月29日 16時14分

堆肥を集める様子(画像:対外向けサイト朝鮮の今日)

新年恒例のあの「臭い」行事が、血なまぐさいものになってしまった。

北朝鮮では、正月休みが終わると、「堆肥戦闘」が開始される。人糞や家畜の糞を集めてわらなどを混ぜ、発酵させて有機肥料を作るというものだ。日本でも古来から長く使われてきたが、化学肥料と下水処理施設の普及、病原菌や寄生虫の媒介になるとして、高度成長期に姿を消していった。

一方、北朝鮮では化学肥料の生産が需要に追いついておらず、それを補うために全国で大々的に人糞集めキャンペーンが繰り広げられる。1人あたりのノルマは以前より減らされたとは言え、大量の人糞をかき集めなければならない。今年も人糞を巡り、大小様々な争いが各地で起きた。米政府系のラジオ・フリー・アジア(RFA)が報じた。

平安北道(ピョンアンブクト)の情報筋は、道内の殷山(ウンサン)郡の当局は堆肥戦闘初日の今月2日、労働者は1人あたり500キロ、中高生は200キロの堆肥を今月20日まで農場に納め、「堆肥証」を受けるように指示した。これを職場や学校で取りまとめ、朝鮮労働党の組織に提出する流れだ。

朝鮮社会主義女性同盟(女盟)に所属する女性は、労働者よりノルマの量が多く、1トンに達することがある。「職業を持たず家でブラブラしている」との決めつけによるものだが、実際は市場で商売をして現金収入を得て、家族を経済的に支えている人が多い。だが、北朝鮮当局は、商売を職業として認めていない。

毎年この時期になると、人糞やそれを発酵させた堆肥を売る商人が登場する。町内の公衆トイレは、人糞を盗まれないために鍵がかけられており、人民班長(町内会長)が管理している。自分の体から出たものであっても、自分のものにはならないのだ。

(参考記事:冬の北朝鮮で暗躍する「人糞ブローカー」登場

だが、今年は商売上がったりだという。当局が市場に対する締めつけを強化し、多くの商人が儲かっていないため、人糞を買う経済的余裕がないのだ。自宅で飼っているブタの糞尿や他人の家の便所から人糞を盗む泥棒が相次いでいる。その現場を目撃されると、取っ組み合いの喧嘩になる。

「年が明けて堆肥戦闘が始まってすぐ、定州(チョンジュ)市内中心部で、他人の家の ブタの糞尿をリアカーに載せて盗み去ろうとしていた女性を、その家の女性が見つけ、髪の毛を掴み合っての大喧嘩となった」
「(その家の女性は)豚を飼い、その糞を堆肥にして自宅の畑に撒いて農業を営み生計を立てているので、豚の糞尿を守ろうと必死だった」
(情報筋)

(参考記事:「共同便所」に女性の切断遺体を隠し…北朝鮮版『冷たい熱帯魚』事件

一方、平安南道(ピョンアンナムド)の情報筋によると、殷山(ウンサン)では、男たちが大きなシャベルと斧を振り回して大乱闘を繰り広げる事件が起きた。

ある工場労働者が、他人の家の便所に忍び込み、人糞を盗もうとしていたところを、その家の男性に見つかり、シャベルで頭をしたたか殴られた。逆上した労働者は、庭に置かれていた斧を手に持ち、反撃した。

騒ぎを聞きつけた人民班長(町内会長)が慌てて安全員(警察官)を呼んできて、ようやく乱闘は収まったが、二人とも病院送りになってしまった。

また、他の町内では、人民班の公衆便所から人糞を盗もうとしていた高校生が、人民班長に見つかってしまい、人糞を積んでいたリアカーをひっくり返した。それが人民班長の体にかかったようで、大喧嘩となった。大声を聞きつけた高校生の母親は、人民班長に「公衆便所の人糞は人民班長の所有物か」と食って掛かり、乱闘騒ぎへと発展した。

(参考記事:「キムチシーズン」を迎えた北朝鮮で多発する野菜泥棒

都市化が進んだ大正から昭和にかけての日本では、住民、地主、仲買人、農民などが糞尿を巡り争いを繰り広げていた。農民が地主から買い取るか、仲買人を介して買い取るかを巡り、騒擾に発展したという事例もあった。それで人糞の供給が滞ると、野菜価格が高騰し、都市住民の生活を圧迫したという。

それと似通った状況が、2025年の北朝鮮でも繰り広げられているのだ。

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