北朝鮮の秘密警察、戦争予備物資の保管状態など検閲
デイリーNKジャパン / 2025年2月4日 6時40分
寒さと恐怖に震え、休みを楽しむどころの騒ぎではなかった。
今年の旧正月は1月29日だった。北朝鮮では祝日になっていて、家族団らんのひとときを過ごす。だが、北部の両江道(リャンガンド)では殺伐とした空気が流れていた。
当局は今年4月からの国境開放を控え、非社会主義、反社会主義、つまり当局が考えるところの風紀を乱す行為や違法行為を根絶やしにするための「100日戦闘」を昨年11月に開始した。
このような検閲(監査、取り締まり)は2009年から2016年まで、年明けから4月10日まで行われていたが、理由は不明だが2017年から2023年までは行われていなかった。それが急に復活したのだ。
そればかりか国家保衛省(秘密警察)も両江道で検閲を開始し、1月までに終了予定だったのを、今月中旬まで延長するという。現地の空気を、米政府系のラジオ・フリー・アジア(RFA)が報じた。
現地の情報筋によると、例年なら旧正月の料理の材料の買い出しに来た人で市場は賑わうが、今年は100日戦闘で、旧正月の雰囲気がすっかり吹っ飛んでしまった。
幹部も庶民も怯えきっており、それは国家保衛省の検閲が無差別的に抜き打ちで行われるからだ。
国家保衛省の本来の任務は、国家転覆、スパイ行為などから金正恩体制を守ることだ。それが今回は司法機関、人民委員会(道庁、市役所)、税関、外貨稼ぎ機関に加え、市場、銀行、糧穀販売所(国営米屋)など、ほぼすべての機関、組織をターゲットにしている。さらには、戦争予備物資の保管の実態についても事細かくチェックしているとのことだ。
(参考記事:北朝鮮女性を追いつめる「太さ7センチ」の残虐行為)
道・市・郡の境界線を超えるのに必要な旅行証明書(国内用パスポート)の発行も、来月20日まで中断された。そのせいで、他地域との流通が麻痺してしまった。また、本来は午前10時から午後8時までオープンしている市場も、営業時間を午後2時から5時までに短縮させられた。
取り締まり班は抜き打ちで市場にやってきて、商品を手に取り、品物の出どころを問いただす。医薬品、ガソリン、魚介類、家電など市場での販売が禁じられている商品を扱っていた商人は、取り締まりを避けるために店を一時的に畳んでいる。商人も客もすっかり減ってしまい、物価も高騰、餅の材料となる餅米や小麦粉の価格は、1キロ1万5000北朝鮮ウォン(約105円)を上回ったとのことだ。
(参考記事:国家の統制に反し「市場経済の砦」となった北朝鮮の国営商店)
さらに、両江道の行政も完全に麻痺してしまっている。朝鮮労働党、人民委員会、司法機関は、取り締まり班の顔色ばかりうかがい、業務を完全に止めてしまったのだ。
両江道の幹部によると、一連の検閲で、恵山(ヘサン)税関の長と、税関内の朝鮮労働党委員会の初級党書記(トップ)、恵山市外貨稼ぎ事業所、両江道商業管理所の所長、恵興洞(ヘフンドン)の洞事務所(末端の行政機関)の長、恵山洞と恵灘洞(ヘタンドン)の糧穀販売所の責任者、城後洞(ソンフドン)と恵江洞(ヘガンドン)の複数の商人らが逮捕された。
(参考記事:数千人が震撼…金正恩「女性社長」処刑の生々しい場面)
多かれ少なかれ、法を破らなくてはまともに生きていけない北朝鮮のことだ。幹部も一般庶民も、いつ捕まるかわからず、息ができないほどの恐怖を感じているとのことだ。
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