金正恩の恐怖政治が生み出した「廃墟ホテル」の無残な姿
デイリーNKジャパン / 2025年2月1日 5時11分
北朝鮮は2020年1月、新型コロナウイルスの世界的大流行を受け、国境を完全に封鎖した。もちろん、外国人観光客の受け入れも停止したが、ようやく昨年2月からロシア人観光客の受け入れを再開した。
北朝鮮ツアーを募集しているロシア・沿海州の旅行会社「ボストーク・インツール」によると、昨年1年間で北朝鮮を訪れた人はわずか1500人だった。コロナ前には、中国人観光客で大賑わいだった。滞在者数は、多い日には1日30万人に達し、一時は受け入れを制限するほどオーバーツーリズムの様相を呈していた。それと比べると、現在はあまりにも少ない。
ただ、国際社会の経済制裁下にあっても確実に稼げる観光業に、北朝鮮は期待をかけているようで、今年から段階的に観光客の受け入れを拡大するようだ。
(参考記事:北朝鮮の空約束となった「12月に外国人観光客受け入れ再開」)
金正恩総書記は昨年12月、東海岸のリゾート地・元山葛麻(ウォンサン・カルマ)海岸観光地区を娘と共に訪れた。同地区は今年6月にオープン予定だと、国営の朝鮮中央通信が報じた。
葛麻が脚光を浴びる裏で、工事が途中で止まったまま、13年も放置されているリゾート地もある。米政府系のラジオ・フリー・アジア(RFA)が報じた。
咸鏡北道(ハムギョンブクト)の塩盆津(ヨムブンジン)海岸公園地区は、ロシアや中国の国境から近く、日本海に面しており、2011年7月からホテルなどの建設が始まった。しかし、資金や建設資材が供給されずに工事がストップ、未だに骨組みのままだ。
(参考記事:金正恩氏、日本を超えるタワーマンション建設…でもトイレ最悪で死者続出)
近隣にある仲坪(チュンピョン)温室農場は、工事が始まってわずか1年3カ月で完成し、その後には規模が2倍に拡張された。一方で、塩盆津のホテルは工事開始から13年経っても廃墟のような状態だ。第2の柳京ホテルと言ったら言いすぎだろうか。
この工事現場をGoogle Earthで確認すると、2012年5月の衛星写真には、何らかの工事が行われている様子が写っている。次の2015年2月の衛星写真では施設が完成しているが、2018年9月には取り壊されている。
別の情報筋は、その事情を次のように明かした。
「ホテルの骨組み工事が行われていた2018年7月、現場を訪れた金正恩氏は、建設の遅れと収容人数の不足、設計の欠陥などを指摘した。それを受けて一部の建物が取り壊され、建て直し工事が始まった」
(参考記事:「マンション屋上が星型に見えないから建て直し」北朝鮮幹部の妙なこだわり)
北朝鮮最高の建築家と言われた馬園春(マ・ウォンチュン)氏は、平壌国際空港の新庁舎の設計を担当したが、2014年11月、金正恩氏からデザインに問題があると指摘され、僻地の農場に「島流し」にされた。11カ月後に復帰したときには「激ヤセ」しており、懲罰の過酷さがうかがわれた。
もっとも、それで済めば御の字で、過去には処刑された現場担当者もいる。塩盆津の担当者もそれを恐れ、せっかく建てた建物を取り壊してしまったのだろう。
(参考記事:【動画】金正恩氏、スッポン工場で「処刑前」の現地指導)
ただでさえ死亡事故が多発している建設現場は、まさに「恐怖ホテル」といって差し支えなかろう。
金正恩氏は、「資金と資材の調達に力を貸すから、2019年10月10日の朝鮮労働党創建日までに完成させよ」と命じた。担当者は、道内の労働鍛錬隊(軽犯罪者を収監する刑務所)の受刑者まで動員して工事を進めた。
ホテルは外国人観光客が利用するため、輸入した資材を使わなければならないのだが、金正恩氏の約束は守られず、資金と資材は供給されなかった。それで温室農場や住宅は完成したのに、ホテルは未完成のままというわけだ。
なお、上述のボストーク・インツール社は、今年3月24日から、塩盆津を含め、羅先(ラソン)、清津(チョンジン)、鏡城(キョンソン)を陸路で訪れる3泊4日のツアーの募集も開始している。費用は交通費と宿泊費、食費、ビザ代込で35000ルーブルと500ドルだ。
ちなみに、同社は今年7月7日、8月4日、18日ウラジオストク発で、平壌、葛麻、馬息嶺(マシンリョン)スキー場を訪れる7泊8日のツアーの募集を始めた。費用はオールインクルーシブで3万5000ルーブルと1400ドルだ。
同社は、今年3月24日から、羅先(ラソン)、清津(チョンジン)、鏡城(キョンソン)を陸路で訪れる3泊4日のツアーの募集も開始している。費用はオールインクルーシブで5000ルーブルと500ドルだ。ツアーの3日目に訪れるのが塩盆津(ヨムブンジン)だが、
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