「中国人が我々をうらやんでいる」金正恩の虚言癖を笑う北朝鮮国民
デイリーNKジャパン / 2025年2月8日 5時2分
北朝鮮の旺載山(ワンジェサン)芸術団は1996年、「将軍様は縮地法を使われる」を発表した。故金正日総書記は「瞬間移動ができる」という内容の歌だが、あまりに荒唐無稽な内容であるため、全世界でインターネット・ミームとして広がってしまった。
国営の朝鮮中央通信や、朝鮮労働党機関紙・労働新聞も、かつては金正日氏や故金日成主席が縮地法を使っていたとする記事を配信、掲載していた。しかし、自国民からも馬鹿にされるような与太話は逆効果を生むと考えたのか、今ではウェブサイトで検索をかけても出てこない。
(参考記事:首領様の伝説は海を越えアフリカ大陸まで飛んで行った? 荒唐無稽な「白頭山伝説集」)
だが、北朝鮮の度を越した虚言癖は相変わらずのようだ。米政府系のラジオ・フリー・アジア(RFA)が報じた。
平安北道(ピョンアンブクト)の情報筋によると、朝鮮労働党は最近、「われわれ式社会主義がいかに優れていて、不敗であるか」という内容のプロパガンダを行っている。
新年早々に開催された政治講演会では、昨年夏の大洪水により家を流されてしまった新義州(シニジュ)の人々が入居する住宅が完成したことを取り上げて自賛。それに対する「中国での反応」とやらを取り上げた。
「昨年、新義州の向かいの鴨緑江下流の住民も水害の被害を受けたが、被災地に住む中国の人たちは、新義州の被災地の天地開闢を目撃して、羨ましさを抑えきれずにいる」
「中国の人たちは、130日間の水害復旧の過程で堤防ができて、現代的な住宅が雨後の筍のように伸びる(北)朝鮮を目の当たりにした」
(講演者)
さらにはこのように主張した。
「『われわれも偉大なる金正恩領導者様の懐に抱かれて暮らしたい』という横断幕が中国に掲げられた」
講演を聞いた人々は、信じる、信じない以前にハナからバカにしてかかっている。
「被災者が入居した復興住宅には、1日に水道と電気がそれぞれ1時間しか供給されない。こんなものを誰が羨むのか」
(参考記事:金正恩氏、日本を超えるタワーマンション建設…でもトイレ最悪で死者続出)
当局は、鴨緑江沿いに建設した住宅が、暖房も調理もオール電化だと宣伝している。しかし、それがまともに使えるように電気と水道が24時間供給されたのは、入居後1週間だけだったという。つまり、「絵」を撮り終えたらもう用済みだということだ。
大ボラを延々と聞かされた北朝鮮の人びとは、逆に中国側の復旧工事の速さを羨みつつ眺めていたという。
「同じ頃に洪水の被害を受けた中国は、わずか数日で普及して日常を取り戻したことを、新義州の人びとは目の当たりにした」(情報筋)
このようなプロパガンダは、現場を知らない中央からの指示で行われたようで、地元当局は、中国で掲げられたという横断幕の画像を見せることはなく、通常配布される講演提綱(レジュメ)も配らず、話を口頭で述べるにとどめたとのことだ。
同じ洪水で深刻な被害を受けた慈江道(チャガンド)の情報筋も、現地で新義州と同様のプロパガンダが行われていると伝えた。
講演会に呼び出され、「中国人も羨ましがっている」との話を聞かされた人びとは、一様にバカにしている。
「衣食住の問題が解決した中国の人びとが、何の不満があって、朝鮮で暮らそうと言うのか」(市民)
(参考記事:飢えた北朝鮮の一家が「最後の晩餐」で究極の選択)
鴨緑江沿いに立ち並ぶ高層住宅だが、中国から見える方にだけ窓ガラスをはめて、反対側の窓はビニール膜で塞いでいるという。また、入居者は、オール電化の暖房が使い物にならないため、練炭を使って暖房ができるように、家を改造しようとしている。
しかし、復興住宅は金正恩総書記からの「贈り物住宅」として下賜されたという理由から、しばらくは改造が許されない。この冬は毛布をかぶるなどして、寒さに耐えるしか方法がない。
住宅や電力供給以前に、商売が自由にできないなど、中国とは比べ物にならないほどに抑圧された自由、深刻な食糧不足、頻繁な勤労動員など、北朝鮮の状況は中国の人びとに広く知られている。
コロナ前は北朝鮮を観光で訪れる中国人が多かったが、その理由の多くが「ノスタルジア」だ。もはや中国では失われた文革時代の遺物が今に至るまで生きている北朝鮮を少し覗いてみたいという好奇心で訪れる人が多く、羨ましがる人などほとんどいないだろう。それを北朝鮮の人々も充分知っているのだ。
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