「令状なしの家宅捜索と公開処刑」国連が指摘した北朝鮮の人権侵害
デイリーNKジャパン / 2025年2月6日 17時11分
国連人権高等弁務官事務所(OHCHR)は5日、北朝鮮の人権の実態をまとめた報告書を公表した。拘禁施設、表現の侵害、食糧問題などを取り上げ、北朝鮮に説明責任と措置を求めた。
2022年11月から2024年10月31日までの北朝鮮の人権状況を扱ったこの報告書には、脱北者175人が証言した強制失踪、拉致、海外に派遣された労働者の強制労働、女性の人身売買などに関する内容が盛り込まれている。
証言の半分以上は、拘禁施設で人権侵害を経験したというものだ。具体的には強制労働、非人道的な環境、食糧不足などだ。
また、外国製のソフトの取り締まりを行う「109常務」の活動が強化されたことも明らかになった。電話や電子機器の盗聴を行い、令状なしに家宅捜索を行い、無許可の映像コンテンツやそれらが保存されたUSBメモリ、出版物、ラジオを没収する。取り調べでは暴言と暴力が横行している。その後、住民を恐怖に震え上がらせるために公開裁判が行われ、銃殺刑をはじめ「犯した罪」とは不釣り合いな処罰が下されると指摘した。
(参考記事:北朝鮮女性を追いつめる「太さ7センチ」の残虐行為)
報告書は、「反韓流三法」と言われる反動思想文化排撃法、青年教養保障法、平壌文化語保護法も取り上げ、これを根拠にして死刑など刑罰の重罰化が行われ、表現の自由に対する抑圧がエスカレートしているとも指摘した。いずれも、国家に「表現の自由と情報アクセスの権利を保護」することを義務付けた、世界人権宣言と自由権規約第19条に反する行為だ。
報告書は次に、食糧不足について取り上げている。聞き取りに応じだ脱北者は、配給システムの崩壊により、深刻な飢餓を経験したことが、脱北する主なきっかけになったと述べた。
その状況は、拘禁施設においてより深刻に現れる。社会安全省(警察庁)、国家保衛省(秘密警察)が運営する施設に拘禁された経験を持つ人はいずれも、極端に量が少なく、人間が食べるに適さないほどの劣悪な食事しか得られなかったと証言した。また、コロナ禍において、その状況がさらに悪化した可能性があると、報告書は懸念を示した。
その一方で、国際社会の圧力の高まりで、安全員(警察官)は人権教育を受けるようになり、拘禁施設の収容者に対する処遇が若干改善したが、全般的な人権状況は依然として深刻なレベルだと評価した。
報告書は、北朝鮮の食糧政策についても指摘した。北朝鮮は、食糧生産と販売を、国に一元化し、市場での販売を禁止する中央集権的な食糧統制を行ったが、民間の商業活動への制限により、食糧事情が悪化し、広範な飢餓を目の当たりにしたと脱北者は語った。
(参考記事:政府の「飢餓救済策」にむしろ反発する北朝鮮国民)
報告書は、最近の脱北者の傾向の変化を指摘した。コロナ前には、人身売買の被害に遭った女性がほとんどだったが、最近では海外に労働者として派遣された男性が増加している。
OHCHRは、北朝鮮政府に、国際人権規約に基づいた法改正を行い、人権侵害被害者やその家族に認定と賠償を与え、各種国際条約の批准を求め、この報告書を伝達した。しかし、5日の時点では何の反応も得られていないと明らかにした。また、北朝鮮の人権問題の解決のために、国連や加盟国、市民団体が協力すべきと訴えた。
2年毎に更新されるこの報告書は、今月24日からスイス・ジュネーブで開かれる第58回国連人権理事会に提出される。
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