北朝鮮の「慰安婦像」計画、金正恩氏が不許可…「日本を刺激するな」

デイリーNKジャパン / 2017年5月19日 7時1分

金正恩氏

韓国の市民団体が、ソウルの日本大使館前などに建て注目を集めてきた平和の少女像。日本軍の従軍慰安婦被害者を象徴するもので、小さいものまで含めると韓国の国内外50ヶ所以上に立てられている。

北朝鮮でもこれと同様の像を建てようとする動きがあったが、金正恩党委員長が中止させたと、米政府系のラジオ・フリー・アジア(RFA)が北朝鮮国内からの情報に基づいて伝えている。

「韓国を孤立させたい」

北朝鮮では昨年6月、朝鮮戦争の開戦記念日に合わせて思想教育の「中央階級教養館」が開館した。RFAが咸鏡北道(ハムギョンブクト)のメディア関係者の話として報じたところでは、朝鮮労働党宣伝扇動部は当初、この施設の入口脇に慰安婦の銅像を建てることを計画。複数の図面を作成して、金正恩氏の裁可を得ようとした。

ところが、正恩氏はこれを不許可とし、さらには日本軍の行った様々な残虐行為を示す展示内容を大幅に減らすよう指示したという。

その結果、同施設の展示物は米国を非難する内容のものが大部分を占めることに。宣伝扇動部の内部では「名前を『階級教養館』から『反米教養館』に変えたほうがいいのではないか」との声が上がるほどだったという。

正恩氏はなぜ慰安婦像の建設に反対したのだろうか。北朝鮮の国境地域の司法機関の関係者によると、その理由は次のとおりだ。

実は、前国家保衛相を務めた金元弘(キム・ウォノン)氏も、党宣伝扇動部とは別に、慰安婦像の設置を金正恩氏に提案していたという。中国よりも先に慰安婦像を建てるべきではないか、との理由からだ。

中国では昨年10月、上海師範大学が、構内にあった上海慰安婦博物館を拡張する形で中国慰安婦歴史博物館を開館させ、入口に慰安婦の像を設置している。

ところが正恩氏は「国家保衛相が関与する案件ではない」として金元弘氏の提案を一蹴し、「国家保衛省は手段を選ばず、日本と南朝鮮(韓国)が国防と技術の分野で協力できないように仲違いさせよ」と指示した。

さらに正恩氏は「日本との関係を改善し、過去の植民地支配に対する賠償金を得て、韓国を孤立に追い込みたい。そのためには日本をむやみに刺激することは控えるべきだ」と述べたとのことだ。

北朝鮮当局も女性虐待

以上のようなRFAの報道内容が、どれだけ正しいものであるかは慎重に見極める余地がある。

確かに、正恩氏は日本の大阪にルーツがあることもあり、北朝鮮の他の幹部たちとは異なる日本観を持っている可能性はある。

北朝鮮メディアは歴史問題で日本を繰り返し非難しているが、言葉で言うのと、象徴となるモノを残すのとでは、世論や国民感情への作用が異なることは韓国の少女像の事例が見せてくれている。

自国のメディア戦略に直接タッチしていると見られる正恩氏だけに、その辺は心得ているのかも知れない。

ただ、慰安婦にせよ拉致被害者にせよ、国家によって生活を蹂躙された被害者の人権は等しく救済されるべきであり、そのために必要なことは何であれなされるべきだろう。しかし、北朝鮮では現在も、女性に対する権力による深刻な人権侵害が続いている。その状況を放置している金正恩体制が仮に慰安婦像を設置したとしても、そこに真摯なものを認める向きは、世界に誰ひとりいないのではないか。

デイリーNKジャパン__北朝鮮_その深部とポテンシャルを探る

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