「この指が覚えていた」―背徳感や恍惚感がエロい女に燃え上がらせる!セックスだけで終わらない、60の官能作品

ダ・ヴィンチニュース / 2016年10月2日 15時0分

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『性を書く女たち』(いしいのりえ/青弓社)

 ちょっと覗き見たいという好奇心でこの本を手にとる人も多いだろう。女が書いて女が読むエロスの世界…官能小説を書く女性たちが、どんな人なのか? どんな生い立ちなのか? その作品は? と、あらゆる想像を膨らまし、興味本位で期待してしまうからだ。しかし、その立ち読み感覚の下心はあっさりと裏切られる。『性を書く女たち』(いしいのりえ/青弓社)に紹介されている9人の女性作家へのインタビューと、60におよぶ官能作品は性愛を超えるほど衝撃的なものだった。

 自分でもコントロールが難しい「性」という本能。心の制御装置が壊れると理解しがたい行動に出たり、傷つけたり、孤立したり、人間を翻弄させる厄介な欲望だ。「性」を題材にした女流作家たちは、男性作家とは違った目線で官能を捉えている。デフォルメされたキャラクターや願望が先行する設定で性欲を満たすというのが男性モノだとすると、女性作家の作品は、母、妻、嫁、と肩書で抑えられてきた欲望が、妄想とリアルの間に生々しく表現されているのだ。その背徳感や恍惚感に女のうちなる炎を燃え上がらせる様が実にエロティックで魅力的である。

 第1部は、その作家にスポットをあてた「性を書く女たち」だ。団鬼六がその才能を称賛した花房観音。「花祀り」という作品の中で、“大人のたしなみ”として調教する性を描いている。男女の絡みだけはない、コンプレックス、努力、復讐といった心理描写が花房氏本人と重なり、女の性の奥深さが語られている。

「贖罪の聖女」を書いたうかみ綾乃は、自身の壮絶な体験を通して、自分の欠落した部分を埋めるように母親のような包容力で男の性欲を受け入れるヒロインを描いた。性愛は現実逃避ではなく素の自分と向き合うことだと説いている。

 元CA、モデル、クラブママの蒼井凛花は、華麗な女社会のドロドロの中で芽生える女同士の性について語っている。「夜間飛行」のレズビアンシーンでは男性目線も意識して書いたという。自身がバイセクシャルであることも公開し、体験を赤裸々に綴っている。

 第2部は、60作の官能作品が、性、女、愛、妻、入門編と5つのテーマで紹介されている。石田衣良、小池真理子、山田詠美など著名な作家の作品もあれば、与謝野晶子、谷崎潤一郎、川端康成など文豪の名前も挙がっている。一見すると官能作品とは思えないものも、著者いしいのりえ氏の解釈にかかると色艶を帯びたエロスの表現に見えてくるから不思議だ。

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