政界のプリンス小泉進次郎があの本に夢中になった本当の理由

ダ・ヴィンチニュース / 2013年4月25日 11時50分

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『談志が死んだ』(立川談四楼/新潮社)

 いまや政界一のモテ男として人気を集めている、自民党のプリンス・小泉進次郎。先の衆議院議員選挙では圧倒的な得票数を獲得し、父・純一郎ゆずりの人の心を掴む演説には定評がある。そんな彼が、最近『FRIDAY』(講談社)と『週刊文春』(文藝春秋)の2誌に、なんと同時スクープされた。

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 すわ、ついに熱愛発覚か!? と思いきや、写真は衆議院の本会議において、熱心なようすで資料に目を通している姿。しかしこの資料、昨年12月に発売された立川談四楼の私小説的作品『談志が死んだ』(新潮社)のコピーだったのだ。本を開いていると会議に集中していないことがバレるのを恐れ、カモフラージュするために本をわざわざコピーしたのだろうか。この手の込みようからも、進次郎が本書に夢中だったことが伺える。じつは進次郎、最近は落語にハマっているとのこと。答弁や演説にも落語は勉強になるのだという。

 著者の談四楼といえば、1983年に真打昇進試験で不合格となり、それをきっかけに談志が落語協会を脱退。落語立川流を立ち上げるに至った“騒動の張本人”である。本書は、異才と呼ばれた談志と、その弟子たちの姿を古弟子である談四楼が綴ったものなのだが、さすがは話芸の達人がしたためただけあり、文章のリズムが軽妙で、マクラやオチといった落語の醍醐味を小説として表現。進次郎にとっても、演説の勉強にはうってつけの1冊になったはずだ。

 しかし、本書の面白さはそれにとどまらない。中盤、談四楼が談志に破門を告げられたという事実が明かされるのだが、その理由は談四楼が雑誌に寄稿した文章にあった。それは、立川談春が前座時代を綴り、後に講談社エッセイ賞を受賞した『赤めだか』(扶桑社)の書評だった。なんてことはない、兄弟子が弟弟子の労作を讃えただけのこと。だが、談志は『赤めだか』にも「ウソだらけだ」と怒り狂い、そして、「誰もオレを理解していない。価値観の共有もない」と言い放つのだ。逆鱗に触れる箇所があったのか、弟子たちにも理解ができない。だが、談四楼は後々に気付く。師が直面していた老いや病いとの闘い、そしてその末に精神の変調があったことに。ここまで赤裸々に書けるのは、師匠と古弟子の関係が、もはや親子のようなものであるからなのだろう。

 昔、談四楼の芸は談志そっくりだったという。「前座や二つ目の頃はそれが自慢で、指摘されると嬉しくて嬉しくて、何しろ稽古してもらったネタの噛むとこまで真似してましたから」というほどだ。「コピーはどこまで行ってもコピー、本物を凌げるわけないのに」とわかっていても、それだけ談志を心から愛し、尊敬していたのだろう。だが、あることをきっかけに「談志のやらないネタ」を探し、自分のものにしていくようになる。そして、そのネタのひとつ『柳田格之進』を聴いたあと、談志は「おまえにはこういう噺が向いてる。どんどんやれ」と談四楼に言ったという。子が親から自立しようと、超えようと藻掻く。そんなことを想起させられるエピソードだ。

 いまだ純一郎と比較されることも多い進次郎。深い親愛に裏付けされながらも、時として突き放すように冷静に談志を描く本書から、スピーチ術以上の何かを進次郎も感じたのではないだろうか。

 ──だが、大事な議会の最中に読みふけるのは立派なサボリ行為。村上春樹の新作発売日には、若手議員に向け「読みたいという気持ちもわかるが、気をつけたほうがいい」と自ら笑い話にしていたようだが、小さな油断が政治家生命を大きく揺るがす事態になることを、どうぞお忘れなきよう。

(ダ・ヴィンチ電子ナビより)

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