「圧倒的じゃないか」 安彦良和「ガンダム原画集」のすごさとは?

ダ・ヴィンチニュース / 2013年6月19日 11時30分

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『安彦良和アニメーション原画集「機動戦士ガンダム」』(安彦良和:著、庵野秀明:責任編集、氷川竜介:構成・編集/角川書店)

 『機動戦士ガンダム THE ORIGIN』や『ヤマトタケル』など、現在漫画家として活躍する安彦良和氏。その名を一躍知らしめたのが、1979~80年に放送され、その後再編集に新作カットを加えて劇場版として公開されたアニメ『機動戦士ガンダム』だ。安彦氏は同作で作画監督とキャラクターデザインを務めていたのだが、その当時描いたアニメーションとなる前の画稿(簡単に言ってしまうとセル画になる前の「下描き」)がまとめられ、30年以上の時を経て『安彦良和アニメーション原画集「機動戦士ガンダム」』(安彦良和著/角川書店)として出版された。実はこの画集、2012年1月に出版される予定だったのだが、デザインや印刷のクオリティアップを目指して発売が延期、1年4ヵ月以上経った今年5月にようやく発売となり、待ち焦がれた人たち、特にアニメ関係者らプロの間で反響を呼んでいるそうだ。

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 これまで一部の人しか目にする機会のなかった貴重な原画だが、普通なら残っていなくても不思議ではないものだという。今回は原画を関係者が個人的に保管していたり、撮影されたポジやコピーが残っていたため、出版に至ったという。しかもこの画集、なんと『新世紀エヴァンゲリオン』を手掛けた庵野秀明氏が責任編集を担当、構成・編集はアニメ研究家の氷川竜介氏が務めており、マニアもクリエイターもファンも、そして何も知らない素人でも唸るほどの仕上がりとなっている。その証拠に、ガンダムの生みの親である富野由悠季氏は本書冒頭の寄稿で、30年以上前の鉛筆画が輝いて見えるのは「仕事のレベルが高いから」で、「どうしてこのように描けるのか、ということについても、才能があるとしか言いようがない」と安彦氏の天賦の才と圧倒的な画力を讃えている。ガンダムの登場人物、ギレン・ザビの名台詞ではないが、まさに「圧倒的じゃないか」というクオリティなのだ!

 本書の構成は、TVシリーズ『機動戦士ガンダム』、劇場版『機動戦士ガンダム』、『機動戦士ガンダムII 哀・戦士編』、『機動戦士ガンダムIII めぐりあい宇宙編』の原画、安彦氏のもとで作画を担当した板野一郎氏とのコラボレーション原画という5つのパートと、巻末に安彦氏が制作当時に書いた作画関連エッセイや、制作現場だったサンライズ井荻スタジオの貴重な写真、安彦氏による当時のスタッフたちが悪戦苦闘するスタジオの俯瞰イラスト、そして安彦氏、板野氏、庵野氏によるアニメの技法などを語る濃い内容の座談会などを収録している。その庵野氏、実は板野氏の弟子(つまり安彦氏の孫弟子)で、アニメ関係の仕事に就きたいと思いながら、諦めかけていた時期に『機動戦士ガンダム』を見て思いとどまった経緯があると対談で語っている。もし安彦氏がいなかったら、『エヴァ』は生まれなかったかもしれないのだ。

 掲載数1000枚超という膨大なカットは、最新のクオリティで鉛筆の濃淡や筆圧まで細密に再現されている。もちろん原画部分はすべてカラー印刷だ。スッと引かれた迷いのない線(安彦氏はこれを驚異的なスピードで描いていたそうだ)、アニメーターへの細かな指定、場面を切り取るレイアウトやカメラワークなど、この本を見ると実際に映像となった作品と見比べてみたくなるハズだ。また安彦氏は対談で、構図やデッサンではなく、まずキャラの動きから絵を発想すると語り、「目線」から動きやそのキャラクターの意志を表現する、という貴重な話も披露している。これが「止め絵なのに、動いて見えるようだ」といわれる安彦氏独特のタッチの秘密なのだろう。天才の迷いなき筆致、その圧倒的画力を本書で確かめて欲しい。


文=成田全(ナリタタモツ)
(ダ・ヴィンチ電子ナビより)

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