あの日から2年3か月、壊滅した石巻の書店が復活!

ダ・ヴィンチニュース / 2013年7月19日 11時50分

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『ダ・ヴィンチ』8月号(メディアファクトリー)

『ダ・ヴィンチ』8月号で特集している、日本全国に存在する“名物”街の本屋さん。2011年に起きた東日本大震災では、被災地の多くの書店が店舗・在庫ともに大きなダメージを受けた。同誌では誌2011年8月号と2012年4月号で取材した書店を改めて紹介。ここではそのなかから、宮城県石巻市のヤマト屋書店を紹介する。

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――ヤマト屋書店(宮城県石巻市)の阿部博昭社長は、あの日、石巻中里店にいた。激烈な揺れに、社員たちと共に隣接するホームセンターの2階駐車場に退避。津波にすべてを押し流されて、ホームセンターは海に浮かぶ孤島と化した。水が引かないまま、屋上の避難者約200人は孤立。寒さに攻められ、食料もまったくなかった。4日目の朝、限界を感じた阿部社長は、流れ着いた大きな発泡スチロールの板に乗って脱出。災害対策本部に急を告げた。孤立していた200人は、その日の夕方自衛隊に救出された。

「石巻の4店舗のうち3店舗が津波で壊滅。建物が無事だった石巻あけぼの店と、仙台市の郊外店2軒も地震の被害で営業停止。被害総額11億円は書店としてはこの震災で最大の被害です。自宅にも津波が押し寄せ、全壊でした」

 従業員はみな無事だったが、家族を亡くした者がいた。阿部社長の親戚もひとり犠牲となった。それでも営業再開は早かった。あけぼの店に、従業員が自主的に集結。黙々と残骸を整理、無事だった本を棚に戻した。営業再開は3月31日。あの日からわずか20日後のことだった。

「まだ食べ物も満足になかった。なんとか再起を図ろうと必死だっただけで、こんなときにお客さまに来ていただけるのかどうか半信半疑でした。ところが、お客さまがなだれ込むように来てくださった。私も、従業員も、それからお客さまも、みんなで泣きました。書店をやってきてよかったとこれほど思った日はなかった。一生忘れません」

 復旧を急ぎ、同年11月までに、全壊した湊鹿妻店と大街道店を除く全店の営業再開を果たす。そこに飛び込んできたのが新規出店の話。それも仙台市内一等地の青葉区一番町、三越の地下である。

「仙台中心部への出店など考えてもいませんでした。地下鉄と直結している地下2階のワンフロア350坪です。私たちの状況を知った三越さんが被災企業支援のためにと声をかけてくれた。迷いましたが、これはやるしかないな、と」

 開店は2012年5月24日。またも人が詰めかけた。地元企業の震災からの復活を象徴するような出店となった。

「おかげさまで順調ですが、こんなことを思うんです。被災地の地元企業は、あの日から大変な目に遭ってきた。復旧復興だけじゃなく、この経験をチャンスに変えなければならない。なにくそ震災前よりがんばってやろうじゃないか、あのピンチをチャンスに変えてやろうじゃないかってね」

 阿部社長の言葉を背に、賑わう店内の棚を見渡す。平台に並ぶ本たちが凛として見えた。本のチカラを思った。


取材・文=土方正志
(『ダ・ヴィンチ』8月号「わたしを本好きにしてくれた、わたしの街の本屋さん」特集より)

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