怪談のスペシャリストが勧める「昭和のノスタルジー怪談」

ダ・ヴィンチニュース / 2013年8月12日 17時30分

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『ダ・ヴィンチ』9月号(メディアファクトリー)

 夏といえば心がひんやりするこわ~い話。しかし、ひとくちに恐怖といっても、さまざまな形がある。幽霊など超自然的な事象を描いた怪談から、人為的なホラーまで……。『ダ・ヴィンチ』9月号の「稲川淳二が贈る真夏の怖い話」特集では怖い本のスペシャリスト4名が、さまざまなジャンルからオススメの怖い本を選んでいる。

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 怪談専門誌『幽』編集長で、幻想文学のアンソロジストである東雅夫氏が紹介するのは「昭和のノスタルジー怪談」だ。

――一口に昭和の怪談といっても戦前と戦後ではかなり様相を異にするし、今の読者が直截にノスタルジーを感じるのは、どんなに溯っても1950年代以降だろう。たとえば57年には、遠藤周作と三浦朱門という文壇で注目の新進作家が、熱海の旅館で揃って幽霊に遭遇、その顚末を克明に公表するというセンセーショナルな事件が起きている。時を同じくして週刊誌が「怪談スリラー特集」の別冊を出し、民俗学者の今野圓輔が“怪談”と銘打つ本格的な研究書を刊行、この頃から「怪談」が高度経済成長と足並み揃えて世間の耳目を集めてゆく。戦後復興のシンボル・東京タワーの竣工が58年。翌59年に民俗学者の池田彌三郎が刊行した『日本の幽霊』は、怪談入門の基本図書として長らく愛読される名著となった。特に「異説田中河内介」の章は、徳川夢声による一連の河内介怪談とともに、現代版御霊伝説を形成してゆく。60年代に入ると、山田野理夫、中岡俊哉、平野威馬雄、佐藤有文ら文芸読物としての怪談実話に筆を染める書き手が輩出した。彼らは児童読物にも意欲的に取り組み、現在活躍している怪談作家たちの幼少期の悪夢を大いに掻きたてたとおぼしい。映像メディアを積極活用した点も共通しており、中岡が74年に刊行した『恐怖の心霊写真集』は一世を風靡する大ヒットとなった。その翌年に初演されたのが、かの「生き人形」の発端となる前衛劇『呪夢千年』である。詳しくは『私は幽霊を見た 現代怪談実話傑作選』の巻末解説と『怪談実話系6』所収の年表を参照されたい。――文=東 雅夫

<あの頃の恐怖を味わう、昭和のノスタルジー怪談>
■『文豪怪談傑作選・特別篇 文藝怪談実話』 東 雅夫/編 ちくま文庫 945円
■『日本怪談集 幽霊篇』 (上・下) 今野圓輔 中公文庫ビブリオ 各980円
■『山田野理夫 東北怪談全集』 山田野理夫 荒蝦夷 1890円
■『体験者は語る 私は幽霊を見た』 中岡俊哉 潮文社 品切れ中

 同誌ではほかにも、書評ライターの小池啓介氏が「異世界への扉を開く恐怖小説の世界」、フリーライター・門賀美央子氏が「見て怖い、読んで怖い、ビジュアルブック&絵本」を、そして戸田書店山形店の名物怪談店長・笠原裕介が勧める「今が旬の怪談実話」をそれぞれ紹介している。


(『ダ・ヴィンチ』9月号「稲川淳二が贈る真夏の怖い話」特集より)

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