サザエさん一家が漂流!? 人権、エロ、宗教、不条理…闇に葬られたマンガのウラ事情

ダ・ヴィンチニュース / 2013年8月21日 11時30分

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『消されたマンガ』(赤田祐一、ばるぼら/鉄人社)

 「ハワイ旅行に出かけたサザエさん一家が飛行機事故に遭い、海に投げ出された一家は名前の通りの生物になって海に還った」――これは、国民的マンガ『サザエさん』(長谷川町子/朝日新聞社) の最終話とされる都市伝説のひとつだ。

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 7月に出版された『消されたマンガ』(鉄人社)に、サザエさんの最終話に関する気になる話が掲載されている。いまはなき出版社・姉妹社から出版されていた単行本68巻(最終巻)の最後に収録されていた「ひょうりゅう記」が、朝日文庫版では未収録になっているというのだ。

 そもそも本書は、人権、猥褻、宗教、著作権、盗用疑惑などの問題でお蔵入りとなった“いわくつき”のマンガ60作品を紹介したもの。さまざまな作品の封印理由が、当時の社会背景や業界のウラ事情などを交えながら明かされている。

 著者は、編集者として『磯野家の謎』(彩図社)などのヒット作を手掛けた赤田祐一氏と、『教科書には載らないニッポンのインターネットの歴史教科書』(翔泳社)などの著書で知られるばるぼら氏。

 例の『サザエさん』の朝日文庫版で封印された最終話は、こう紹介されている。

「サザエさん一家が乗っていた船が沈没し近くの島に漂流。そこで原住民に捕まってしまう。彼らは人食い人種であわや食べられてしまうというところだったが、サザエが機転を利かせて助かる、という内容だ。(中略)黒人や少数民族へのステレオタイプな視点が含まれることから、未収録となった可能性が高い」

 移動中の事故、海での漂流などは、ビミョーに都市伝説に似てなくもない? また、闇に葬られた60作品の中には、サザエさん並みに知られる国民的マンガの名前もいくつか見受けられる。ほんの一部だがご紹介しよう。ちなみに、これらは問題となったマンガが読めるわけではなく、基本的にはテキストがメインだ。

『ちびまる子ちゃん』…サイケデリックな夢の話が不条理すぎて未収録に
『美味しんぼ』…作中で紹介した“離乳食の与え方”に誤りが発覚
『こちら葛飾区亀有公園前派出所』…旧日本軍を連想させる描写が問題視された?
『毎日かあさん』…授業参観エピソードで「クラスの五大バカ」表現で学校側とトラブルに

 年代順に並べられた封印作品を追うと、時代の空気や社会的な背景によって規制の対象が変わることがよくわかる。戦前ならいざしらず、戦後の日本においても抹殺されるマンガが存在することに、驚く人も少なくないだろう。

 2013年5月には、自民党、公明党、日本維新の会などが共同で「児童ポルノ禁止法改定案」を国会に提出した。児童を性的虐待から守るためだというが、インターネット上にはマンガやアニメがやり玉に挙がるのではないかと危惧する声があふれている。これらの問題を考える際にも参考になる“もうひとつのマンガ史”だ。

文=矢口あやは
(ダ・ヴィンチ電子ナビより)

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