空気は読むな! トラブルはオープンに! 日本一自殺率が低い町の空気とは

ダ・ヴィンチニュース / 2013年8月28日 11時30分

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『生き心地の良い町 この自殺率の低さには理由がある』(岡檀/講談社)

 世知辛い世の中だ。「生きている意味が分からない」なんてつぶやきを耳にすることもしばしば。2012年の日本全国の自殺者数は約2万8000人だという。3年連続減少傾向にあるとはいえ、とてつもなく多い数値だ。人はどうしたら、自殺など考えずにのびのびと過ごせるのだろうか。

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 徳島県南部の太平洋沿いにある小さな町、海部町(現 海陽町)。一見ごく普通の町に見えるこの町は全国でも極めて自殺の低い「自殺”最”希少地域」として知られている。地域間の自殺率を比較するには、人口10万人に対し何人が自殺により死亡したかを示す「人口10万対自殺率」が用いられるが、市区町村の全国平均25.2人に対して、海部町は8.7人。これは島をのぞけば、全国で一番低い数値だ。

 何故、海部町の自殺率がこんなにも低いのか。岡檀氏著『生き心地の良い町 この自殺率の低さには理由がある』(講談社)によれば、海部町は、人の個性や自由意思が最大限尊重されている場所であるためだという。

 海部町は、自己信頼感が強く、自分なりの判断基準を持って生活している。例えば、この町では赤い羽根募金が集まらないらしい。他の町や村では周囲の人に合わせて募金するのが普通だ。だが、海部町では「あん人らはあん人。いくらでも好きに募金すりゃええが。わしは嫌や。」等と言って自分だけの判断で行動する。別にケチというわけではなく、そういう人は、祭りに使う山車の修繕費には大枚をはたいたりする。ただ、自分の意思でのびのびと行動をしているだけなのだ。

 しかし、個人主義とも取れる住民が多いこの町にもコミュニティはある。それは江戸時代発祥の相互扶助組織「朋輩組」だ。地域住民のコミュニティというと、会則が厳しく排他的なものが一般的だろう。だが、「朋輩組」に会則はほぼなく、新参者でも希望があればいつでも入退会もできる。村八分、ということはあり得ない。入らなくてもそのことで何ら不利益を被ることはないのだという。「みんな違ってみんな良い」という個性を重視する精神が根付いており、一人が他と違った行動をとったとしてもそれだけを理由に「浮く」ことやコミュニティから排除される心配がないらしい。そんな環境の中で町民同士は支え合いながら、ゆるく繋がり合っているのである。

 また、町民には「病は市(いち)に出せ」というモットーがあるという。「病」とは、単なる病気のみならず、家庭内のトラブルや事業の不振など、生きていく上でのあらゆる問題、「市」は公の場を示す。悩みやトラブルは隠すのではなく、周囲にさらけ出そう、という意味合いのようだ。そうすれば、助けてくれる人が必ずいる。やせ我慢や虚勢を張ることへの戒めが込められているらしい。だからなのか、「自殺最希少地域」であるのに、海部町はうつ病受診率が高い。罹患率ではなく、受診率であることに注目すべきだろう。少しでも気になることがあったらすぐに人へ相談する精神が海部町民には身に付いている。

 遠すぎず近すぎない距離でゆるく繋がり合い、人の個性、多様性を重んじること。他に惑わされず自分の意思を重んじるが、不安はすぐに他へと打ち明けること。空気を必要以上に読み、コミュニティから逸脱した行動を取るものをKYとして否定する現代社会とは逆行した生活がここにはある。

 どうすれば、海部町民のように暮らせるだろうか。岡氏が提唱しているのは、「どうせ自分なんて」と言うのをやめようというもの。一歩ずつ自己信頼感を高め、ストレスをはねのけられる内面の強さを手に入れよう。海部町の住民たちの生活は示唆的だ。

文:アサトーミナミ
(ダ・ヴィンチ電子ナビより)

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