『I【アイ】』完結! いがらしみきおが語る、言葉に依らない世界

ダ・ヴィンチニュース / 2013年9月14日 7時20分

写真

『I【アイ】』(いがらしみきお/小学館)

 「トモイ」という神様を探して二人の少年が旅する物語『I【アイ】』。『このマンガを読め!2012』(フリースタイル刊)で第1位に選ばれるなど、コアなマンガファンから高い評価を受けた。この作品がついに完結。いがらしみきおは何を描きだそうとしたのだろう。『ダ・ヴィンチ』10月号では完結を記念して、著者・いがらしみきおにインタビューを行っている。

関連情報を含む記事はこちら

「私は物心ついた頃から結婚するまで、世の中というものがなんだかすごく怖かったんですよ。だって、みんなの考えていることが何もわからないわけですよ。みんな会社に行くけど、その理由は誰も説明できない。食っていくためだ、と言うかもしれないけど、そのために30年も40年も会社に通う本当の理由は、誰もわかってないんじゃないかと思うんです。結婚も同じで、世間体が気になるとか、なんとなくそういうものだから、という理由しかないはずです」

 『I【アイ】』の2巻で、主人公の雅彦は「岡島にんげん農場」という宗教団体にも近い農業コミューンに入ることになる。そこでは他人同士が家族として暮らし、「話しの行」や「治しの行」といった自己研さんの義務が課せられる。

「あそこでは朝3時に起きて豚の世話をしろと命令される。理由がわからなくても従わなければいけない。そのルールに馴染めない人は完全にスポイルされてしまうわけです。人間社会の縮図としてわかりやすいかたちで描いたものですが、10代後半の頃、私は世の中というものは、にんげん農場みたいなものだと感じていました」

「にんげん農場」の人々が絶対視するルールや習慣。一般社会の人からすれば奇妙に思えてならないが、同じく人間が作ったものという意味では、たしかに「にんげん農場」のルールも一般社会のルールも大差ないのかもしれない。

 こうした人間社会の枠外で生きている存在が、もう一人の主人公・イサオである。身よりもなく野生児のような暮らしをしているが、人の魂をイタコのように自分に宿らせたり、「見えないものを見る」不思議な力を持っている。

「イサオというのは人間と獣の中間的存在として描きました。みんな親から言葉を覚えて、それから学校で学んで言語世界が固まってきますけど、イサオはそっちの方には行かなかった。つまり“言葉に依らない世界”に生きている。犬や猫は言葉に依らず、理由もわからないまま生きている。もし神様の目というのがあるとすれば、犬や猫のような目をしていると思うんです。逆に私たち人間は、常に何かを考えている目をしている。物のとらえ方にしても、これはティッシュ箱だ、というふうに常に言葉で見ている。そうやって周囲を言葉で固めていかないと、言語的に真っ暗な世界になってしまって生きてはいけないんです」

 同誌ではいがらしみきおがマンガ家になったきっかけや、作品に込めた想いを語っている。


取材・文=大寺 明
(『ダ・ヴィンチ』10月号「コミック ダ・ヴィンチ」より)

ダ・ヴィンチニュース

トピックスRSS

ランキング