「ツレうつ」の細川貂々の新作コミック ―ガリレオ、山南敬助、明智光秀……もしも歴史上の人物が精神科にかかったら?

ダ・ヴィンチニュース / 2013年11月19日 11時30分

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『万願寺偉人クリニック』(細川貂々/小学館)

うつ病患者が増大している日本だが、なにもうつになるのは現代の日本人ばかりではない。世界や日本の偉人たちも、「病み」の入り口と言われる「悩み」を抱えていたのだ。そんな世界・日本の偉人が抱えきれなくなった悩みを、不可思議精神科医・トウコ先生が大胆診察するというコミック『万願寺偉人クリニック』(小学館)が10月30日に発売された。『ツレうつ』(幻冬舎)の作者として知られる細川貂々は、偉人たちの悩みにどんな解決方法を提案しているのだろうか。

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 まずは、振り子時計や落下の法則を考え、初めて地球が自転していることを唱えたガリレオ・ガリレイから。「地球が回っている」ことを知った彼は、「ウソを常識には出来ん」と思い、「地球が回ってる!!」と言い続けた。しかし、その結果裁判で有罪になったあげく学者としての職も取り上げられ、監視付きの家に閉じ込められてしまう。最愛の娘も亡くし、自分も病気になり「ワシの人生なんだったのか……」と嘆いていた。そんなとき、万願寺偉人クリニックにやって来たのだ。そこで、トウコに「間違ったことが常識なら、自分が正しいと思うことを主張し続けるしかないのよ」と言われる。たとえ、世間からは負けているように見られたとしても、自分の意思を貫き通すことで勝つことができると教えられたガリレオは、自信をもって元の世界に帰っていく。

 また、主君である織田信長を殺してしまった明智光秀は、「今思うと、どうしてあんなことをしてしまったのか…自分でも分からないのです」と悩んでいた。周りからは「ただ天下を獲りたかった欲の深いヤツ」とか「上司にいじめられてたから仕返しした」、「ずっと上司に恨みを持ってたんじゃないか」と言われたけど、そうじゃないと言う。それに対して、上司にひどい目に遭わされ続けて、別のエライ人から圧力をかけられ、しかもその上司が無防備な状態だったら、誰だって同じことをしたと思うと責めるでもなく受け入れるトウコ。ただし、最後には「私もずっとバカにされて言い返せなかった人に文句言ってこよう! やっぱりそーゆーことは生きてるうちにやっとかないとね」と言ってニッコリ笑うのだ。

 新選組の山南敬助は、だんだんと意見の合わなくなった近藤や土方とどう接すればいいのかということで頭を悩ませていた。それぞれの思いの行き違いが重なって互いを見失い「自分のやりたかったことも、彼らがやりたかったことも分からなくなって」しまったのだ。すると、トウコは「それだったら、とりあえず視点を変えて、外から見てみればいいんじゃない?」とアドバイスする。たしかに、行き詰まっているときには客観的に見ることができなくなってしまいがち。そんなときは、外に出てみるのが最も効果的なのかも。

 そして、兄に命を狙われている源義経は、「同じ目的を果たしたのに、兄の願いも叶えたのに、どうして私の命を狙うのだっ?」「私には兄が何に対して怒ってるのか、何が気にいらないのかさっぱり分からんっ」と怒っていた。でも、そこでトウコに「目的が同じだから相手も同じ考えだと思うのは間違いだわ」と諭される。「お互いにもっと話し合える機会があったら、こんなふうにならなかったのかもねぇ」と言われた義経は「確かに…もう一度話す機会を作るために、今ここで死んではいけない気がする」と、生き延びるために旅立つことを決めるのだ。

 人は誰もが、少なからず何かしらの悩みを抱えて生きている。その悩みが「病み」につながってしまう前に、視点を変えたり、今の溜まった思いを吐き出すことが大切なのかも。この本は、その吐き出し方や悩みからの抜け出し方がわからないという人たちの明かりになってくれるだろう。

文=小里樹

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