デキ婚は何が悪い? 愛人は必要!? 不倫は義務!! これからの愛とセックスについての深遠なる考察

ダ・ヴィンチニュース / 2014年1月7日 11時40分

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『官能教育 私たちは愛とセックスをいかに教えられてきたか』(植島啓司/幻冬舎)


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 結婚するときに妊娠している人、いわゆる「できちゃった結婚」といわれる人の割合は約25%といわれているそうだ。少し昔なら「ふしだら」と眉をひそめられることから、いつの間にか「結婚をしようと思う2人の後押し」になって久しいが、ネットのコメントなどでは芸能人がデキ婚をすると「なんで避妊しないんだ!」といったような否定的なコメントが目につく。個人的な話で恐縮だが、筆者の友人はある披露宴で「できちゃったじゃなくて、出しちゃった結婚だろ~?」と言って新郎を茶化し、そのテーブルだけ爆笑に包まれたという経験があるが、近年婚前交渉に対しての意識は変わってきたものの、デキ婚には妊娠という想定外の展開が含まれているため「本当は失敗したんじゃないか?」というニヤニヤ目線につながっているのではないだろうか。しかしできちゃった相手と結婚するならいいが、それが不倫関係や愛人だったら、一気に世間の見る目は変わる。それは「一夫一妻制が正しい」と世間が判断しているからだ。

 日本の法律では「重婚」が認められていないので同時に複数と婚姻関係を結ぶことはできないのだが(ちなみに刑法では2年以下の懲役)、そもそも一夫一妻制というのはいつ、どこで、誰が、なんのために決めたものなのだろうか? そう考えていくと一夫一妻制だけではなく、なぜ婚前交渉がいけないと考えられてきたのか、また不倫や愛人を持つことを絶対に許さないと思ってしまうのは、いつ、誰に教わって、それがなぜ「してはいけないこと」だと思うようになったのか、その理由をあなたは説明できるだろうか?

 そうした問題に切り込み、古今東西の民族調査や文学、芸術、研究、身近な話などから、どのように人は社会によって性愛について教育されるのか、そしてどんな影響を受けているのか、また愛の価値観の歴史や様々な制度、これからの愛やセックスについて論じているのが、聖地研究の第一人者で、性愛やギャンブルにも造形の深い、宗教人類学者である植島啓司氏の『官能教育 私たちは愛とセックスをいかに教えられてきたか』(植島啓司/幻冬舎)だ。

 本書によると、現在の日本で普通になっている「恋愛」という概念が入ってきたのは明治時代だそうだ。その背景には19世紀のヴィクトリア朝時代における、キリスト教のエヴァンジェリズム(福音主義)の影響があるという。当時はヨーロッパにおける性道徳が最も厳しかった時代で、性的なことを表に出すのは全部ダメ、セックスを子孫繁栄以外の目的で行うのもダメ、「肉体は人間の尊厳をおびやかすもの」としてアンタッチャブルなものだったという。さらには自慰行為は医学的にも身体に悪影響を与えると考えられて禁止、尻は「腰」、乳房は「胸」と言わなくてはいけないなど、その締め付け具合は凄まじく、適応できない人が続出、社会に歪みが出るほどだったそうだ。

 しかし本書には世界中での様々な習慣が紹介されている。イヌイットは「明かりを消して」というゲームでセックスの相手を交換して長く暗い冬を楽しんでいたり、インドのムーリア族にはゴドルという少年少女が住む家があり、一緒に寝る相手を毎晩選ぶ(好きになった相手がいても、4日に一度は替えなくてはいけない!)ことをして、結婚の前に欲望を燃え尽きさせてしまうことを予防しているという。また夫が妻を貸す習慣や、妻が愛人を持つことがいいとされ、妻が産んだ子は相手が誰であろうと必ず嫡出子として育てる地域があったり、自然界の雌は頻繁に性交している(ハヤブサの仲間であるアメリカチョウゲンボウは、1回の産卵のために約700回も交尾するそうだ)など、日本人が持っている恋愛観やセックス観をグラグラと揺さぶってくる。

 そして愛人が必要な理由やなぜ愛が続かないのか、本当に不倫はいけないのか、結婚に至らない恋愛というのはすべて失敗なのかなど、本書も読み手の気持ちをガンガン揺さぶってくる。3組に1組が離婚する現代。そろそろ旧態依然とした恋愛や結婚とは違う、新しい親密な関係が必要とされているのかもしれない。

文=成田全(ナリタタモツ)

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